福岡大学で学び、挑戦し、夢を追う学生たちに迫るインタビュー企画、「ふくらませ、大胆に。」
学びに向き合う姿勢や将来への想い、日々のキャンパスライフを通した一人一人の個性と成長をお伝えします。
「お前はもっと自信を持て」。
台湾で出会った仲間にそう言われた言葉が、森永光輝さん(工学部電子情報工学科4年次生)の心に残っている。
半導体を学ぶ学生にとって台湾留学は、世界的な研究拠点に身を置く貴重な機会だ。だが森永さんにとって、その価値は技術以上に、自分自身の姿勢を見つめ直す時間となった。
「自分では普通にしているつもりでも、向こうから見ると自信無さそうだったみたいで」。
台湾の寮や研究室での会話の中で、その言葉を何度も投げ掛けられた。留学は、自信無さげな自分が変化する瞬間であった。


福大への進学のきっかけは、高校で始まった情報教育だ。アルゴリズムを組み立てる授業がパズルのように面白く、「これから情報やプログラムが当たり前になる」と感じた。一方、大学入学時点でプログラミングの経験はほぼ無い。1年次の実験やプログラミングの講義は想像以上に厳しく、「大学ってちゃんとしっかりやるんだな」と専門性に圧倒された。理論と実験の差に戸惑い、課題に追われる日々も続いた。
それでも踏みとどまれたのは、自分なりの学び方があったからだ。
「丸暗記は一度もしていません」。公式の意味や成り立ちを遡り、なぜそうなるのかを理解する。ストーリーとしてつながれば応用が利き、友人にも説明できる。「ただ覚えるだけだと、どこかで破綻すると思うんです」。根本から理解する姿勢が、専門的な内容にも向き合う支えになった。
3年次、半導体分野の研究室へ進む。トランジスタ作製の実験では、チップの洗浄から露光、蒸着、測定まで一連の工程を体験した。「デバイスを作る流れをつかめたのが一番大きいです」。全体を理解することで、自分が今行っている作業の意味が見えてくる。「今どの部分を担っているのか」を意識するようになり、学び方も変わっていった。


就職活動を終えた4年次、福岡大学の制度と支援を活用して台湾へ留学した。福大と国立雲林科技大学が連携するTSMC認定の半導体人材育成プログラムで、現地研究室に所属しながら卒業研究を進める仕組みだ。休学せず研究も続けられ、奨学金も福岡大学と雲林科技大学の両方から受けられた。「研究も経験も同時に得られる。正直、行かない理由は無いなと思いました」。
現地の研究室でまず驚いたのは、設備の規模と工程の細やかさだ。作業ごとに部屋を移動する広いクリーンルーム、洗浄用の薬液も購入するのではなく自分たちで調製する徹底したプロセス。「そこからやるのか」。衝撃でした。同時に、福岡大学の装置環境の充実ぶりにも気付かされたという。
留学生活は順調なことばかりではなかった。授業は中国語中心で、生活環境の違いにも戸惑った。それでも大学や寮での生活の中で、英語でコミュニケーションをとり続けるうち、仲間から掛けられたのが冒頭の言葉だ。
「もっと自信を持っていい」「失敗して当然だろ」。
そう言われ続けるうちに、気付かずに自分に掛けていたブレーキが外れ、挑戦へのためらいが薄れていった。
卒業研究では、深紫外線を検出する半導体センサーの特性向上に挑んだ。酸化ガリウムに酸化インジウムを組み合わせ、検出できる波長を調整できる可能性を探る研究だ。「特定の波長だけでなく、用途に応じて変えられるようにしたかった」。データ取得は簡単ではなかったが、「理屈を分からないまま進むのが嫌で」と原理に立ち返りながら研究を進めた。
「前よりも失敗を怖がらなくなりました」。
彼は台湾留学で得られた成長をそう語る。春からは情報システム関連の企業で半導体に関わる仕事に携わる。「まずは研修をしっかりやって、基礎を固めたい」。その上で、「自分の担当だけじゃなく、全体を理解して仕事ができるようになりたい」と視線を先に向ける。
福岡大学での地道な学びに加え、困難の多かった留学経験が、彼に「何事にも自信を持って取り組めばいいんだ」という強力な思考の変化を与えてくれた。
「行って良かったです、本当に」。留学中の辛さを苦笑いしながら思い返して、そう言い切った。その表情は、爽やかで確かな自信に満ちている。


【関連リンク】
・公式Instagram(「ふくらませ、大胆に。」別企画掲載)
・工学部ウェブサイト
