福岡大学で学び、挑戦し、夢を追う学生たちに迫るインタビュー企画、「ふくらませ、大胆に。」
学びに向き合う姿勢や将来への想い、日々のキャンパスライフを通した一人一人の個性と成長をお伝えします。
「ボランティアを始める動機がなんであれ、人のために行動できる人になりたかったんです」。
そう話すのは、珠算研究部の村上潤さん(法学部経営法学科2年次生)。
「ボランティアをやってるって話すと『ただの自己満足』って言われることもあるんですけど、あながち間違っていなくて、人を満足させる ことが自分を満足させることでもあると思うんです」と照れくさそうに笑いながらも、その言葉の裏には、大学生活の中で少しずつ変わってきた自分への実感がにじんでいる。
人のために何かをすること。
それは見返りを求めない善意のように思われがち。しかし、彼の行動には、そんなきれいごとを超えた、もっと正直で自然な感情がある。
「誰かの役に立てたら、単純に嬉しいじゃないですか」
その一言に、彼の心根、本質がのぞき見える。
大学入学当初、彼は「人の役に立ちたい」などと明確な意思を持っていたわけではなかった。小さい頃から習っていたそろばんにもう一度挑戦したいという思いで珠算研究部に入部したが、気付けば経験者として後輩の指導にも熱を注ぐようになっていた。
そんな中、先輩から幹事を打診されたのは入部からわずか数カ月後。
まだ1年次生。驚きもあったが、恩義ある先輩への「恩返し」の気持ちで自然と引き受けた。
「先輩に少しでも追いつきたくて」
頼られたら、自分にできる範囲で全力で応えたい──。その“自然体”の姿勢は、後の彼の大学生活の根幹を成していく。


一方で、もう一つ、継続している活動がある。子ども食堂のボランティアだ。
最初は「友達に誘われたから」というシンプルな理由で始めたが、活動を重ねるうちに、子どもたちと対等に向き合うことの大切さを実感するようになった。
背中に子どもを乗せて遊ぶときも、対話のときも、「一人の人間として」敬意を持って接する。
「まだ20歳にもなっていないけど、大人としての背中をちゃんと見せたくて」。
そんな言葉が自然に出てくるようになったのは、大学で経験を積み、人との関わりの中少しずつ成長してきた証だ。
この“誰かを支えたい”という気持ちは、自分の過去の経験からも育まれている。
幼少期、そろばん教室の年上のお兄さんが憧れで、家族以外の頼れる大人に初めて出会った。
高校時代、生徒会長として壁にぶつかったとき、何気なく声をかけてくれた友人がいた。
「支えられた記憶があるから、自分も誰かに手を差し伸べたい」。
村上さんの“恩送り”は、義務感でも正義感でもない、記憶に根差した自然な感情から生まれている。
最近では「KODOMO LABO」という学生プロジェクトにも参加し、福岡大学の社会連携センターと協力しながら、子どもたちが経済を学ぶイベントの運営にも携わっている。
振り返れば、入学当初は「何か面白いことをやってみたい」くらいだった。
それが今では、組織を動かし、子どもたちの未来に関わり、大学の外ともつながっている。
変わったのは、世界ではなく、自分の視野だった。
「“人のため”にやってるつもりだけど、やっぱり最終的には自分のためにやっている気がします」
人のために動くことが、自分を育ててくれる。無理をせず、背負い込み過ぎず、でも目の前の誰かに手を差し伸べること。
それが彼の、“人のため”なのだ。
【関連リンク】
・公式Instagram(「ふくらませ、大胆に。」別企画掲載)
・法学部ウェブサイト