福岡大学で学び、挑戦し、夢を追う学生たちに迫るインタビュー企画、「ふくらませ、大胆に。」
学びに向き合う姿勢や将来への想い、日々のキャンパスライフを通した一人一人の個性と成長をお伝えします。
600年以上の伝統を持つ日本最古の歌舞劇、能楽。
福岡大学能楽部は創部から65年以上の歴史を持つが、一時は休部状態だった。その伝統を一人で受け継ぎ、復活させたのが後藤菜乃実さん(人文学部文化学科2年次生)だ。
能との出会いは高校時代。能の魅力満載の漫画をきっかけに興味を持ち、オープンキャンパスで能楽部の存在を知った。だが入学してみると、部は休部中。SNSでの問い合わせには「1人での活動になります」と返ってきた。それでも迷いは無かった。過去の部の講師に連絡し、部の復活に奔走した。
現在は部員4人。講師を招いての稽古のほか、平日も練習を重ねる。録音や録画は行わず、その場で覚える昔ながらの稽古法が基本だ。「謡(うたい)は上音(じょうおん)という音階が基準になるのですが、人によって高さが違うんです。ドレミのように絶対的な音階が無いので難しい。詩吟とも和音ともまた違う。まるでお経のような響きです」。
テクノロジーが進化する今、逆に身体を使う表現の価値が増すと感じるようになった。「演じるときに出る“ムラ”って、人間にしか出せない。“生”の舞台だからこその再現性の無さに意味があると思うんです」。
能は若い世代にとって遠い存在である。「能楽部というと、“農学部?”と間違われることも多くて」と笑う。だからこそ、もっと身近に伝統芸能に触れてもらえる工夫が必要だと痛感するようになった。


「伝統芸能をもっとカジュアルに」。
消えかけた伝統の火を、再び灯した後藤さんが、次に見据えている夢だ。
「演目の内容を読み物調の分かりやすい言葉に書き換えたり、能面や衣装を展示したり。きっかけってどこにあるか分からないので。興味を持ってもらえる入口をたくさん用意したいんです」。自分がハマった能の魅力をどのように同世代に届けるか。アイデアは尽きない。
大学という同世代が集う場所で、ムラ=個性豊かな学友に伝統芸能、能の魅力を訴える。能は、演劇であり、ミュージカルであり、アート。ここにも一人、伝統を受け継ぐ若者がいた。
【関連リンク】
・公式Instagram(「ふくらませ、大胆に。」別企画掲載)
・人文学部ウェブサイト