福岡大学で学び、挑戦し、夢を追う学生たちに迫るインタビュー企画、「ふくらませ、大胆に。」
学びに向き合う姿勢や将来への想い、日々のキャンパスライフを通した一人一人の個性と成長をお伝えします。
「友達に言われて気付いたんです。自分たちって、すごいことをしているんだなって」。
そう語るのは、山本雄太さん(工学部電気工学科2年次生)。彼が所属するロケット開発サークル「FUROCK(フロック)」は、ハイブリッドロケットの開発・打ち上げを行う九州でも数少ない学生団体だ。
山本さんがロケットに魅了されたのは、高校時代の理科研究部で参加した模擬人工衛星「CanSat(カンサット)」制作がきっかけだった。ものづくりへの熱は冷めることなく、大学でも新たな挑戦を求めて設立間もないFUROCKへ加入した。
現在、FUROCKには35人程が所属する。活動の中心は、ハイブリッドロケットの設計・製作、そして年1回行われる打ち上げ実験。サークル内では構造、電装、推進系などに分野が分かれ、分担して一機のロケットを完成させる。
ハイブリッドロケットは、個体燃料と液体酸化剤を組み合わせたタイプで、安全性が高く、学生が扱うには適している。ただ、構造は配管の設計から燃焼実験に至るまで精密さが求められ、工学の複数分野の知見が必要だ。FUROCKでは、原理を理解することに重きを置き、自作エンジンから開発してきた。
「今まで、打ち上げの準備は、定期試験期間と丸カブリだったんです」と山本さんは笑う。ロケットの打ち上げは毎年8月だが、事前に安全審査や燃焼実験が必要となる。時間管理が難く、先輩たちも苦労してきた。山本さんはプロジェクトマネージャーに就任後、まず全体のスケジュール見直しに着手。サークル要員が開発にも学業にも集中できる環境を整えた。
FUROCKには文系の学生も複数人在籍しており、宿の手配や展示解説などをサポートするほか、工学系の仕事を担うメンバーもいる。「文理関係なく“やりたいこと”で役割を決める」のがFUROCK流。固定観念にとらわれない自由な発想に、理系メンバーも刺激を受けることが多い。ものづくり企業でのインターンシップでは、「ロケット開発経験」が思いがけず役立ち、現場の苦労に対する共感が生まれた。「講義だけでは得られないリアルな知識・経験と喜怒哀楽が、FUROCKにはある」と語る。


「実は、FUROCKは一度存続の危機に瀕したことがあるんです」。前任の指導教員が離任した際、支援体制が不安定となり、チームも解散派と存続派に分裂した。行くも留まるもイバラの道。山本さんも「自分たちの代は耐えたとしても、後輩の代に負担をかけるかもしれない」。日夜頭を悩ませた。しかし、後輩の「自分たちで何とかします」という言葉に背中を押され、存続を決意。その後、学内の公認団体となり活動は飛躍的に拡大した。
今年8月、FUROCKの6号機となる機体が秋田の空に打ち上がる。自らがリーダーとして設計に関わった機体が白煙を引きながら空へ吸い込まれていく姿を見たとき、どんな感情が浮かぶか想像もできないと言う。
さらに、山本さん自身も高校時代の経験を生かして、CanSatの人工衛星プロジェクトにも参画。順調に進めば、アメリカでの打ち上げも予定されているという。「将来は人工衛星の開発に携わることが夢です」。その夢に向かって、着実に一歩ずつ歩みを進めている。
山本さんにとってFUROCKは学びの場であり、挑戦の場であり、何より「仲間とものづくりに夢中になれる場所」。宇宙への道は決して平坦ではない。それでも地上から空を目指し、仲間と共にロケットを飛ばす――その挑戦こそが、かけがえのない日々となっている。
【関連リンク】
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・工学部ウェブサイト