福岡大学で学び、挑戦し、夢を追う学生たちに迫るインタビュー企画、「ふくらませ、大胆に。」
学びに向き合う姿勢や将来への想い、日々のキャンパスライフを通した一人一人の個性と成長をお伝えします。
「発表が苦手だった私が、多くの社会人を目の前に堂々とプレゼンしているなんて」
そう話すのは、テクノロジーに苦手意識を持っていた林望乃果さん(商学部商学科3年次生)。ゼミ活動を通してAI×マーケティングの最前線に触れ、世界の舞台で提案を発表する学生へと驚きの成長を遂げた。
商学部を志したのは、経営コンサルタントとして活躍する父の影響だった。入学後、彼女が夢中になったのがマーケティング。授業で聞いた「おせっかいなほど相手を思うのがマーケティング」という言葉に、自分の性格が重なったと話す。
学部での学びで興味を深め選んだのが、消費者行動論・マーケティングのゼミ。AIを使って小売業の売上向上を支援するという最先端の取り組みに、彼女の好奇心は一気に膨らむ。しかし、当然ではあるが、ゼミ活動で支援プロジェクトが始まると、戸惑いの連続となる。難解な専門用語に苦悩、データ分析も未知の領域。初めは「本当に私にできるのか」と不安ばかりが募ることに。
「最初は、AIもデータ分析もよく分からなくて。リフト値?フィルタリング?と戸惑うばかりでした」
中でも、地場のスーパーとリテールAI研究会との三者協働プロジェクトは、彼女にとって大きな転換の機会だった。
インバウンド(外国人観光客)の商品購入データを基に、AIで顧客の“隠れたニーズ”を探り出し、現場で実践してみる。何度も何度も試行錯誤を重ね、AIと現場を行ったり来たり。そんなサイクルを回すうちに、“これがマーケティング”といった本質に少しずつ近づいていく感覚を覚えた。ただ、悩んだのは、データから導いた仮説を「本当にそうなの?」と問われたとき。ペットフードの売上向上の可能性を示した分析では、「異常値ではないか」と指摘された。未開の選択を見いだすことの喜びはおろか、「間違いでは」という恐怖がいつも背中にのしかかっていた。
「でも、そこに可能性があるって信じたかったんです」
地道に詳細な検証を行い、その妥当性の説得を重ねた結果、予想以上の成果が数字として現れた。売上は一部の商品で800%という大増加。学生ならではと言っていいのか、固定観念や先入観の無さが幸いしたというべきなのか、柔軟な発想が成果を生んだ。
「社会人なら切り捨てていたかも、って課長さんに言われて、でも嬉しかったですね」


しかし、この成果(数字)を出すことの厳しさ以上に彼女が知ったことは、「人と動くこと」の難しさと面白さだった。最初は「自分がやった方が早い」と抱え込むことが多く、仲間のやる気を削いでしまったことも。そんなとき、「頼られるのも嬉しいことだよ」の言葉をきっかけに、チームの中で役割を分担し、仲間の力を信じるようになった。周囲の力を引き出しながら成果を上げる。その経験は、彼女を自然にリーダーへと成長させていった。
その後、プロジェクト成果は国際会場で披露される。シンガポールで開かれた展示会では、英語でプレゼン。ここでもまた不安しかなかった彼女だが、未開の選択肢を見いだした妥当性・有効性を「伝えたい」という思いが不安を遠ざけた。かつては「人と話すのが怖かった」という彼女が、自信を持って、しかも世界に向けて発信した瞬間だ。
「話すのが怖くなくなり、今では会話・プレゼンを楽しめるようになったことが、一番の成長です」。そう笑みを浮かべ語る姿からは、確かな自信としなやかな強さが感じられる。
現在は、広告代理店でインターンに参加し、AIを活用した広告制作に取り組む。目指すは、「人の心を動かすクリエイティブをつくること」。AIを使い、自分の表現で誰かに届く確かなものを生み出したいと語る。
「AIを味方にして、周囲の力を引き出しながら、チームで成果を出せる人間になりたいんです」
おせっかいな彼女が、おせっかいなほど相手のことを思って見いだす未開の選択肢。漠然とビジネスを学びたいと考えていた入学時には想像もしなかった将来像。経験の先に見えたのは、AIでも予測できない自分の可能性だった。
【関連リンク】
・公式Instagram(「ふくらませ、大胆に。」別企画掲載)
・商学部ウェブサイト