福岡大学で学び、挑戦し、夢を追う学生たちに迫るインタビュー企画、「ふくらませ、大胆に。」
学びに向き合う姿勢や将来への想い、日々のキャンパスライフを通した一人一人の個性と成長をお伝えします。
「極度の緊張しいなんですよ。ステージの前は逃げ出したくなるくらいに」。
そう語る平田みさきさん(法学部経営法学科3年次生)は、ステージに立つたびに自分と向き合う。


父、母、姉の4人家族。姉の後を追いかけて、5歳の時にピアノを習い始めた。中学校でも姉と同じ吹奏楽部に入ったが、高校で初めて違う選択をし、軽音楽部に入る。入部当初は中学時代に担当していたドラムスを選んだ彼女。母親に「歌も好きなんだから、ボーカルもやってみれば」と勧められ、歌い始めた。
人より少し低めの声がコンプレックスだったが、意外にも周りからは歌声を褒められた。好きなアーティストを真似るように歌い、「誰かになれる瞬間がめちゃくちゃ楽しい」と思うようになる。
恥ずかしくて人には言えなかったけれど、「歌手になりたい」という気持ちが膨らんでいった。
最初の転機はすぐにやってくる。
高校2年生の時、友達に触発されて軽い気持ちでボーカルオーディションに応募。周りの参加者がバチバチに衣装をキメて、絶対歌手になるんだと意気込みを語る中、ノーメイクに高校の制服で予選に参加。「ソロで活動したいですか?グループですか?」と質問されても、答えを持っていなかった。


そんな彼女だったが、あれよあれよと予選を勝ち抜き、グランプリを受賞する。
「『歌手を目指してます』って言っていいんだと思えた瞬間でした」。
グランプリの副賞は、1年間の無料ボイストレーニングと3カ月間のFM福岡のレギュラー番組。だが、活動の時期と大学受験が重なってしまう。
夢への扉を開くチャンスを得たのに、SNS発信や曲作りもしなかった。何も結果を残せず、育成契約は終了してしまう。猛烈に落ち込んだ。
それでも歌を止めなかった。
「一度夢を見た以上、後戻りしたくなくて」。
そして福岡大学へ進学。オーディション後の育成契約時に、内容をよく理解できないまま契約書を交わした経験から、将来学びが役に立ちそうだと法学部を選んだ。
福大は、“家族全員が通った大学”。安心感の中で、「もう一度、自分の力でやり直そう」と決めた。
大学ではフォークソング愛好会に所属。“誰でも受け入れる”オープンな雰囲気や、好きな音楽のジャンルや方向性が違う人を尊重し合う懐の深さが心地良い。音楽を通した人との繋がりが、夢を語ることを躊躇わない自分に変えてくれたと感じている。
昨年、ボイストレーニング教室が主催する全国オーディションで、九州代表として東京のステージに立った。数十社の音楽関係者を前に歌い終えた瞬間、「ああ、終わった」とつぶやいたという。
「周りは演出まで完璧なのに、私は“照れ”があって、殻を破るようなパフォーマンスができなかったんです」。
審査のコメントには〈個性をもっと〉〈今っぽくない〉の文字。帰り道、胸の中で何度も繰り返した。「もう迷わない。次はバカになってでも、全部出し切ろう」と。
この日を境に、彼女の行動は変わる。
目下、パソコンを使って作曲に取り組む。中学生の頃から書き続けている日記や、通学中の読書メモが曲作りの大切な材料になっている。インスピレーションを得るために、とにかくたくさんの本を読むようにもなった。
「前は人に見られるのが怖かったけど、今は“これが私”って出せるようになった。弱さも迷いも全部、曲にして昇華すれば個性に繋がるなって」。
学園祭のミスコンをきっかけにライブ配信を始めた。
「最初は恥ずかしくてカメラの前で止まっちゃうこともあったけど、やっていくうちに慣れてきて」。今では歌やトークを通してフォロワーと繋がるのも楽しみだ。
さらには中洲で初めての路上ライブにも挑戦。
「ほとんどの人が素通りしていく中、何人かでも足を止めてくれるだけで嬉しかった。こうやって名前を広めていくんだなと実感しました」。
今は作曲とSNS発信の両輪で日々を走り続ける。
挫折も涙も、今は歌の中に溶けている。自分の声を信じて、次のステージへ向かう。


【関連リンク】
・公式Instagram(「ふくらませ、大胆に。」別企画掲載)
・法学部ウェブサイト
