福岡大学で学び、挑戦し、夢を追う学生たちに迫るインタビュー企画、「ふくらませ、大胆に。」
学びに向き合う姿勢や将来への想い、日々のキャンパスライフを通した一人一人の個性と成長をお伝えします。
「遊ぶ側から作る側になりたい」
小学生の時、ゲーム「マインクラフト」に衝撃を受けたことが、豊田蒼天さん(商学部商学科 3 年次生)がゲーム制作を志したきっかけだ。
簡単なプログラミングから始め、高校では自作 PC で本格的な制作へ。
物語や世界観を練る時間は、現実よりも濃密な“もう一つの世界”を生きる感覚だった。
しかし進路選択は、ゲームの専門学校ではなく福岡大学商学部。
「正攻法じゃなく、自分なりの“武器”を集めたかったんです」。
同じ志を持つ人ばかりの環境で競うより、異なる分野の知識や経験を吸収して差別化したい。その思いが、入学後の行動を後押しした。
まず取り組んだのは、人と直接つながること。
「ずっとネット中心で活動してきたけど、実際に会って話すと熱量が全然違うんです」。
高校まで一人で制作を続けてきた彼は、同じ情熱を持つ仲間と対面で語り合うことに飢えていた。
学生ゲーム制作コミュニティ「作るっちゃん」では、他大学や専門学校を回って参加者を募り、ゲームジャムを開催。
ネット全盛の時代に、直接顔を合わせることで生まれる熱気を実感し、信頼を獲得していく。
「制作は技術だけではなく、人間関係によっても磨かれると知りました」。


その経験が、次の気付きにつながる。AR作品を手がける芸術家のアシスタントとして、新聞紙を使った立体映像など、低コストで高い価値を生む仕掛けを間近で見た。
「自由な発想で何も無いところから始めても、ちゃんと利益になる。面白さと稼ぐことは両立できるんだ」。
創作に経済的な視点を持ち込むことが、自分の作品の可能性を広げることだと感じた。
ゼミでは、市民参加型の科学プロジェクトに挑戦。人が興味を持ち、行動を続けるための仕組みを探る中で、哲学の授業にも足を運ぶようになる。
「行動の背後にある心理を理解することが、あらゆるエンタメの設計図になるんだなと」。
こうして集めた武器、人と直接関わる力、面白さを経済に結び付ける感覚、人を動かす仕組みへの洞察が、一本の線のようにつながっていった。
その線は、現在制作中の登山ゲームと毒舌キャラクターを掛け合わせた挑戦的な作品へと結実する。
昨年の展示会で企業から声が掛かったのは、完成度以上に、その発想の鮮やかさが評価されたからだ。マーケティングと創作は、今や彼の中で自然に溶け合っている。
入学前は「ゲームを作らないと生きていけない」と信じていた。
それは狭い一本道のような世界だった。しかし、大学で多様な人や分野に触れ、武器を増やし続ける中で、そのこだわりは自然とほどけていった。
「儲かって面白ければ、ゲームでなくてもいい」。
選択肢は無限に広がり、創作の自由度も増した。こだわりを手放せたことこそ、最大の成長だと感じている。
視野を広げた豊田さんが次に選ぶステージは、必ずしもゲームの中とは限らない。だが、そこで生まれる物語は、きっとまた誰かを夢中にさせるだろう。
【関連リンク】
・公式Instagram(「ふくらませ、大胆に。」別企画掲載)
・商学部ウェブサイト