福岡大学で学び、挑戦し、夢を追う学生たちに迫るインタビュー企画、「ふくらませ、大胆に。」
学びに向き合う姿勢や将来への想い、日々のキャンパスライフを通した一人一人の個性と成長をお伝えします。
きっかけは“推し”だった。手話サークル「hanate」の副代表・小宮さくらさん(人文学部文化学科3年次生)は、「好きなアイドルが手話を使うのを見て、興味が一気に高まりました」と話す。
高校1年生の時、新型コロナウイルスの流行で最初の緊急事態宣言が発令され、高校生活の大半が行動制限下にあった。外に出られない日々の中、手話を学ぶ時間が楽しみの一つだった。


大学生になったら、制限下でできなかったことを思いきり経験したい。サークルに入り、人と関わり、自分の心が動くことにたくさん出会いたい。大学生になる頃には、世の中が少しずつコロナ前の空気を取り戻し始め、その憧れを後押しする環境が整っていった。
文化学科を選んだのは、「人」に対する漠然とした興味があったからだ。“人の心のしくみ”や“人が創造すること”をいろいろな視点から学んでみたい。言葉や美術といった表現の背景にある“想い”に触れたい。そんな関心に導かれ入学を決めた。
友だちがみな別の大学に進学し、入学直後は広いキャンパスを一人で歩いた。そんな時、ふと目に入ったのが、障がい学生支援センターの「障がい学生支援ボランティア」説明会の案内チラシだった。
聴覚障がいがある学生の学びをサポートすることが目的。活動に参加すれば、練習していた手話が学べると聞き、飛び込んだ。
支援する学生との出会いは、彼女の手話への“興味”を“情熱”に変える。
授業中、先生の説明を直ぐ筆談で伝えてあげられないもどかしさ。並んで歩く帰り道、筆談で話そうとすると何度も立ち止まってしまう現実。
「もっと仲良くなりたい。もっとこの人のことを知りたい」。その思いが、手話を深く学びたいという原動力になった。

「一緒に手話サークルを立ち上げない?」と誘ってくれたのは、ボランティア活動に参加していたもう一人の1年次生だった。薬剤師を目指す彼女は、どんな患者さんにも対応できるコミュニケーション力が欲しいと熱意に溢れていた。
練習の場が必要。動きがある手話をテキストで学ぶには限界がある。専門家から学べる環境が欲しいと、サークル立ち上げに向けた活動を開始する。
2人の試みは、SNSの運用や宣伝ポスターの作成から始まった。当初は友だちを頼りに参加してくれる人が中心だったが、次第にInstagramのDMから興味を持つ学生が集まるように。
2人だったメンバーは30人に増え、昨年4月には大学の公認を受けた。「手話、ちょっと気になるんです」。そんな軽やかなきっかけで飛び込んでくる人が増えたことが、何より嬉しいとほほ笑む。
公認後、初めて参加した学園祭では、他大学の手話サークルと協力し「手話歌」の動画を制作。歌詞の意味や感情を手話と表情で表現するパフォーマンスに、大人も子どもも一緒になって手を動かし楽しんでくれた。分かり合える喜びがそこにあった。
昨年12月には手話検定4級に合格。サークルの仲間と練習を重ねた成果であることを、誇らしいと思う。
手話の外部講師からは、“ろう者の文化”についても学んだ。
「聞こえない人には曖昧ではなく、はっきり分かりやすく伝える必要がある」。
この言葉に、彼女はハッとする。自分の気持ちを表すことは、ろう者にとっても生きる上で大きな意味を持つ。それを知って、彼女自身も、以前より素直に自分を表現できるようになったという。
一方で、支援する側だけでなく、支援される側にも苦労があることも知った。「どちらの気持ちにも寄り添えるようになりたい」その思いは、将来につながっていく。
最近では、音声認識技術の発達や補聴器の外見の変化により、実はろう者の中でも手話を学ぶ人が減っていることを知った。それだけ社会が便利になった反面、手話文化が薄れてしまっている現実もある。
「みんなが、自分らしく生きやすい社会であってほしい」。
その願いは、支援現場の経験から強くなった。手話を広めることが、誰かの生きやすさにつながれば良いと、活動を続けている。
心理学も、哲学も、手話も。根っこにあるのはいつも同じ― 人を思いやる気持ちだ。
今、彼女の中で未来の姿がはっきりと見え始めている。「大学で学生を支援する仕事がしたい」。
過去の経験を、誰かの学びを支える力に変えるために。

【関連リンク】
・公式Instagram(「ふくらませ、大胆に。」別企画掲載)
・人文学部ウェブサイト
