〔研究者コラム〕「SNSとの上手な付き合い方(第6回)」SNSの仕組み(2) ソーシャルグラフ

新年度が始まって約2カ月がたちました。新しい環境にも慣れ、LINEやFacebook等のSNSで新たな人間関係を築いている人も多いのではないでしょうか。そこで、総合情報処理センター研究開発室長の奥村勝教授が「SNSとの上手な付き合い方」をテーマに、「SNSにはどんな特徴があるのか」「利用する際のメリット・デ メリッ ト」「そもそもSNSはどんな仕組みなのか」等、複数回にわたってお伝えしています。

00_line-top.gif

SNSを実際に利用したことがある人は、初めて利用した直後なのに「知り合いかも」といったような表現で、実際の知り合いが表示されて驚いたことがあるかもしれません。あるいは、SNSをしばらく利用して「友達」が増えていくと、 同様に「知り合いかも」といった表現で、他の利用者を紹介されることがあるかと思います。どうして、SNSは自分の友達や知人の関係を調べたのだろうかと驚いたり、不安に思うことがあるかと思います。 今回は、そのようなSNSにおける疑問の背景にある仕組みについて少し紹介したいと思います。

SNSでは利用者間の人間関係や社会的なつながりをソーシャルグラフ(Social Graph)と呼ばれるグラフ情報で管理しています。図1にその概念例を示します。丸の部分が利用者個々人を表し、それらを結ぶ線が利用者間のつながりを表しています。SNSではこのグラフ情報を利用して、利用者間のつながりや相関関係をモデル化しています。

20160525-1.jpg

図1 ソーシャルグラフの検索例

 

20160525-2.jpg

図2

例えば、ソーシャルグラフの一部として図2のような状況を考えてみましょう。「Aさん(あなた)」はSNS上で「Bさん」、「Cさん」と友達であるとします。また、同様に「Dさん」も「Bさん」「Cさん」と友達であるとします。そうすると、共通の友人である「Bさん」「Cさん」を持つ、「Aさん(あなた)」と「Dさん」にも何らかの関係があることが推測できます。このような場合にSNSは、「Aさん(あなた)」に対して、「Dさん」は「知り合いかも?」というような案内を表示するという仕組みです。ここで本当に「Dさん」があなたの知り合いで、SNS上での友達認定をすると、ソーシャルグラフ上の「Aさん」と「Dさん」の間に新たなつながりが加わることになります。

では、各SNSはどうやってこのようなソーシャルグラフを形成していくのでしょうか?具体的にはSNS登録した個人プロファイル情報(生年月日、出身学校、居住地や趣味等)や、登録時に提供したスマートフォンの連絡先情報(電話帳に登録されている人々の名前や電話番号、メールアドレス等)が利用されていると推測されます。

加えて、SNS上での友達関係にある利用者が提供した同様の情報等が用いられていると思われます。異なる利用者でも学校や趣味という共通事項があれば、何らかのつながりがあるのではないかとSNS側は推測することが可能です。また、「いいね!」や「返信」の頻度によって、つながりがある「友達」の中での親密度などを推測することも可能です。

このようなソーシャルグラフは、SNSの利用者数が増えれば増えるほどその利用者間の関係も詳細かつ具体的に分かり、いわば現実世界の人間関係の縮図のような情報を、コンピュータで処理可能な電子データとして形成することが可能になるのです。各SNSでは、このようなソーシャルネットワークを基に、利用者間の情報交換や、新たな利用者間の関係構築に活用するだけでなく、広告活動や市場分析など多角的に利用していると推測できます。

01_line-under.gif

小バナー.png