〔研究者コラム〕「SNSとの上手な付き合い方(第5回)」SNSの仕組み(1) 普及の背景

5月に入って新しい環境にも慣れ、LINEやFacebook等のSNSで新たな人間関係を築いている人も多いのではないでしょうか。そこで、総合情報処理センター研究開発室長の奥村勝教授が「SNSとの上手な付き合い方」をテーマに、「SNSにはどんな特徴があるのか」「利用する際のメリット・デメリッ ト」「そもそもSNSはどんな仕組みなのか」等、複数回にわたってお伝えしています。

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さて、最新の調査の一つでは、全世界のインターネット利用者の67%がSNSを利用しており、日本国内でも46%であるとの報告があります(出典1)。このように全世界的に極めて広く普及し、日常的に使われるようになった背景には、いくつかの要因の組み合わせがあると考えられています。

ここでは話を簡単にするために、以下の3つの側面からお話しします。

 1)クラウドサービスの実用化(大規模データの処理と活用)
 2)通信インフラの普及とスマートフォンの登場(個人がいつでも、どこからでも情報にアクセスできる手段の普及)
 3)SNSを通じたコミュニケーションの魅力(他人とのつながりや、感動の共有)

一つ目は、クラウドサービスと呼ばれるような大規模データの処理や活用が実用化したという技術的背景です。SNSでやり取りされる大量の情報(データ)を実用的な速度で処理し、利活用する情報処理技術が実用域になったという側面があります。例えばFacebookでは、2015年8月には1日のログイン数が10億人を超える状況となりました。また、Twitterでは、アニメ映画中の主人公のセリフに合わせてユーザが同時に投稿し、その数が1秒間に14万3千ツィートに達するケースなども発生しています。このように、SNSに対して大量の処理要求が、全世界の利用者から日常的に行われていることを想像すると、その処理能力の高さが想像できるでしょう。

二つ目は、これらのクラウドサービスと利用者を結ぶ通信インフラなど環境が充実した社会的背景です。もちろん、SNSは利用者あってのサービスです。クラウドサービスの発展の背景には、インターネット等の通信基盤の社会的普及があります。例えば日本におけるインターネットの人口普及率は83%に達しており、パソコンの普及率は78%、携帯電話に至っては95%という状況にあります(出典2)。いわゆる利用者がサービスを利用するに必要な条件が、十分に整ったということです。

さらに加速度的に利用者の普及を拡大させたのは、スマートフォンと呼ばれる携帯情報端末の登場です。いつでも、どこからでも、SNSにアクセスできると同時に、内蔵のカメラを使って写真や動画も撮ることができ、これ一つあれば情報を閲覧するだけではなく、自ら積極的に情報を発信することが容易になりました。

三つ目は、利用者を引きつけてやまない魅力が備わっているという点です。 総務省の調査結果(出典3)によれば、SNSを利用して実現できたこととして、
 (1)疎遠になっていた人との交流(再会)
 (2)情報の受発信
 (3)ソーシャルメディアを契機とする新たなコミュニケーション
 (4)身近な不安や問題の解決
 (5)社会やコミュニティの問題解決

が報告されています。このように利用者個々の目的に応じた活用ができることもSNSの大きな魅力の一つかもしれません。

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