〔研究者コラム〕ー「日本の都市が生み出した『闇』を読み解く(最終回)」地方都市の「新生」のためにー

全7回シリーズで紹介してきた「日本の都市が生み出した『闇』を読み解く」に関するコラムですが、今回で最終回となります。コラムを担当するのは高岡弘幸教授(人文学部文化学科)です。

高岡教授のプロフィルや研究情報等はこちらをご覧ください。

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―商店街での調査はどのようにされているんですか?

先生:主にライフヒストリーと呼ばれる方法です。生活史ともいうように、人びとが生まれてから今に至るまでの生活の経験、例えば、学校時代、買い物やデートの記憶、また、両親や祖父母から聞いた話などを聞き取り調査します。そうした個人の歴史を何十人分も重ねていくと、その地域の生活の変化が浮かび上がってきます。

―地味だけど、面白そうな研究ですね。学生さんたちとどこを歩かれたんですか?

先生:県立高知女子大学時代は、高知県内各所、富山県富山市、島根県松江市、北海道旭川市などで調査しました。旭川では、吹雪の中に消えていく学生さんたちの姿が記憶に焼き付いています(笑)。福岡大学のゼミでは、大分県臼杵市、2014年7月には、福岡県の直方市石炭記念館長の八尋孝司さんのご協力を得て、聞き取り調査を行いました。

―研究成果は拝見できるんでしょうか?

先生:県立高知女子大学時代の調査は報告書として出しました。臼杵市の分はまとめている最中です。また、私は2005年から高知市史編さん委員会・民俗部会長を務めていますが、今年の3月に『地方都市の暮らしとしあわせ‐高知市史民俗編』(高知市)を出版しました。民俗学の調査項目に従ってまとめる従来の自治体史の民俗編とは大きく異なり、この本では、市民のライヒストリーを中核に据えました。発売以来、市内書店で売り上げ1位を7週も記録するなど、大きな反響がありました。専門家からも、生活文化の盛衰の理由がよくわかるなどと、高い評価を得ています。

―記憶の掘り起こしは、地域おこしにどのように活用されるのでしょうか?

先生:何をどこの店で買ったか、何をどのように調理して食べていたかというような生活文化は当たり前すぎて、誰かが記録しないと、あっという間に忘れられてしまいます。そうした記録をきちんと残すことは、過去をその時の状況のまま感じるようにすることだと思います。過去を知らずに、新しい文化は生み出せないのではないでしょうか。

―なるほど、都市の「再生」ではなく「新生」を目指しているのですね。私も調査に参加させてください!

先生:はい。涼しくなったら、ぜひ学生さんたちと街を歩きましょう!

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商店街調査を行った髙岡ゼミの学生一行

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