〔研究者コラム〕ー「日本の都市が生み出した『闇』を読み解く(第6回)」都市伝説と場所の記憶の喪失ー

全7回シリーズで「日本の都市が生み出した『闇』を読み解く」と題したコラムを紹介しています。コラムを担当するのは高岡弘幸教授(人文学部文化学科)です。

高岡教授のプロフィルや研究情報等はこちらをご覧ください。

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先生:これまでにお話しした幽霊や妖怪研究以外に、17年前から、学生さんたちを巻き込んで継続して行っているのが「商店街」研究です。

―幽霊と商店街ですか? まったく結びつかないような研究テーマですね。

先生:都市伝説を使って説明してみましょう。現代の都市伝説の大きな特徴は、話の中に場所に関する情報が一切語られないことだと考えています。例えば、少し前までは「あのトンネルに幽霊が出るのは、5年前に起こった悲惨な事故が原因だ」のように、本当に起こった事故かねつ造かはともかく、怪異が生じる「場所」にまつわる「記憶」が語られていました。ところが、私の研究によると、2005年ごろを境にして、そうした場所の記憶が話の中から欠落するような話が多くなったのです。

―それは、どういうことでしょうか?

先生:いろいろと理由はありますが、最も分かりやすいのがスーパーマーケットとコンビニエンスストアの増加による地域の風景や生活スタイルの全国的な画一化です。都市の郊外の様子を思い出してもらうと、よく理解できるのではないでしょうか。

―どこに行ってもまったく同じような風景が広がり、買い物はスーパーとコンビニ、郊外のショッピングモール、洋服は全国チェーンのファストファッションばかり。実は地域間の格差はあっても、同じような生活スタイルになったわけですね。今や、ネットショッピングもある!

先生:そうした生活実感によって、都市伝説をつくったり、語ったり、ネット上に書き込んだりする際に、場所の記憶を語ることができなくなったのではないかと考えているわけです。まさに、地方都市中心部の空洞化、商店街のシャッター街化と同じ流れの中に生じた現象ですよね。都市の本質は生産ではなく、消費活動です。だから、私は学生さんたちと地方都市、それも地域の中心であった商店街を歩いて、都市の記憶を掘り起こしたいと考えているんですよ。

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