南極通信⑦―第58次南極地域観測隊の活動を写真付きで紹介―(1月3日~10日)

福岡大学理学部・林政彦教授(地球圏科学科)が、第58次日本南極地域観測隊の一員(福岡大学海外研究員)として、平成28年11月末にオーストラリア西海岸フリーマントルで南極観測船「しらせ」に乗船。12月22日、南極大陸に上陸しました。約40日間の滞在期間中、無人航空機を用いた大気微粒子観測、大気 放射・降雪・雪面観測などを実施し、南極大陸上の大気と氷床の相互作用が環境変動に及ぼす影響の解明に挑みます。

林教授からは連日、観測隊の様子について写真とコメントが寄せられています。本コラムでは、南極における日本の南極地域観測隊の活動の様子を、第58次南極地域観測隊員である林教授の観測隊生活を通じて、広く社会に広報することを目的に紹介していきます(日時は現地日時)。

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光の屈折でつぶれた太陽

【1/3】無人飛行機「カイトプレーン」の試験飛行を行う。

【1/4】1月2日にS17にやってきた地球物理学(固体地球)分野の隊員たち7人が明日、S17を離れる。名残を惜しんでの懇親会を実施する。明日からは、また、6人だけの世界となる。

【1/5】地物部隊S17を離れる隊員たちに疲れの色が濃くなってきた。S17に入ってから約2週間。働き尽くめに働いてきた。休日にしようという社長の提案があった。朝食は、11時にブランチ。しかし、仕事が進んでいない部分もあるし、定常的にこなさなければならない仕事もある。あまり休みという雰囲気ではなく、何となく仕事を続けてしまうような感じとなった。私は、他の隊員の協力も得て、相変わらずのカイトプレーン試験飛行。まだ、観測装置は載せていない。自動操縦で十分に飛べるという確信が得られた一日であった。

【1/6】カイトプレーンに観測装置を載せての初フライト。おおむね、良好な運用ができるということが確認できた。観測結果としても上層の方がエアロゾル濃度が高そうというような興味深い結果が得られた。

【1/7】鏡開きを行った。鏡山神社、加藤神社のお札とともに、分電盤神棚に飾ってあったお供え餅の鏡開き。雑煮に焼きもち。一応は、正月。

風呂に入るだけの水の量は確保できていないが、数日に1回髪を洗うだけの水は確保できている。午後、風が弱まるときが多いので、その時を狙って、屋外で(南極大陸の真っただ中で)みんなで順番に洗髪。髪の長い女性も洗髪できた。カイトプレーンで2kmまでの鉛直分布観測に成功した。午後、S17付近一帯が霧に覆われる。

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真夜中の太陽

【1/8】カイトプレーンのP30ポイントまでの往復観測飛行、目視外飛行に成功。国際協力航空網であるDROMLAN着陸に備えて滑走路の整備を行った。

【1/9】とっつき岬付近までの往復35kmの自動観測飛行に成功。これで、カイトプレーンによる沿岸域までの観測を実施できる自信を獲得することができた。

【1/10】今日は低い雲も観測されているため、カイトプレーンの観測は見送り。一方で、準備途中である気球浮揚無人航空機観測の観測手段となる電動カイトプレーンのマニュアルテスト飛行を実施した。夏至(北半球の冬至)からすでに20日余り。太陽高度がだんだん下がってきた。真夜中の太陽は、まだ沈まないものの、地平線(雪平線?)すれすれを這うよ うになった(写真)。大気がきれいなため、雪平線すれすれの太陽でも減衰が少なく、まぶしい。光の屈折で、太陽の形は少しつぶれて楕円形になっていた。夜の気温は-11度以下まで下がるようになっている。太陽高度が下がるとともに気温も下がってきている。

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