南極通信①―第58次南極地域観測隊の活動を写真付きで紹介―(12月2日~9日)

福岡大学理学部・林政彦教授(地球圏科学科)が、第58次日本南極地域観測隊の一員(福岡大学海外研究員)として、現在、南極に向かっています。

11月末に、オーストラリア西海岸フリーマントルで南極観測船「しらせ」に乗船。12月末には昭和基地に近い南極大陸上に観測拠点を設置する予定です。約40日間の滞在期間中、無人航空機を用いた大気微粒子観測、大気放射・降雪・雪面観測などを実施し、南極大陸上の大気と氷床の相互作用が環境変動に及ぼす影響の解明に挑みます。

林教授からは連日、観測隊の様子について写真とコメントが寄せられています。本コラムでは、南極における日本の南極地域観測隊の活動の様子を、第58次南極地域観測隊員である林教授の観測隊生活を通じて、広く社会に広報することを目的に紹介していきます(日時は現地日時)。

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【12/2】フリーマントル出発直後の船上での記念写真。右から3番目が林教授

 

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12月5日の昼食

【12/5】暴風圏に入るかと思ったが、思いのほか風静か。

気温がだいぶ下がり、薄着で甲板上に出ると寒いと感じるようになった。海水面温度も10℃を下回った。南極が近づいてきている。

まだ激しい揺れはないが、ゆっくりとした揺れで、体調不良となる隊員多し。 自分もなんとなく、酔っている(酒のせいではない)が、食事は順調に取れている。

 

 

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船の近くに現れたクジラ

 

【12/6】荒天予想を覆して、静穏な朝を迎えた。 現在の海水温は、3℃以下となっている。 昨晩は、オーロラが出現。本日は、クジラが昼、夕に近くを通過。

観測隊では、共同通信社の記者が先生となりカメラ撮影の講座が開かれる。

昨晩オーロラも見ないで横になっていたためか体調良好。勇んで、クジラ撮影に飛び出す。気温も下がってきて、南極が近いと感じる。


 

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ハイボリュームサンプラー

【12/7】午前7時過ぎに南緯55度線を通過。

連続観測は、軌道に乗った感じ。マニュアルの整理や追加作成を行う。

昼食後、野外装備の使用方法などについての若干の解説があった。昭和基地周辺の氷は薄いようなので、S17ポイント(昭和基地から約20kmの観測地点)に入る日が早まる可能性もあるとのこと。

トラブルになっているハイボリュームサンプラーを、分解(写真)、チェック、再組立てしたのち、動くようになった。明日には、問題解決させたい。揺れが収まり次第、サンプリング開始と行きたいところ。

 

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「初氷山」

【12/8】南緯60度を通過、海面水温は、0℃あたりで落ち着く。

午前11時過ぎ氷山をしらせが視認。昼食後に写真を撮りに行く。周囲には幾つも氷山が見られ、南極に来た(戻ってきた)という印象。

外に出ると、今日もクジラに出会う。潮吹きも見られた。灰色アホウドリが、しらせの後ろの乱流と地面効果(表面効果)を利用して楽しそうに飛び回っていた。

ちなみに、「しらせ」の副長(副艦長のこと、要するに、ナンバー2)が福岡大学の卒業生とのこと。そのうち、艦長になるのだろうか?

 

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灰色アホウドリ

【12/9】南緯63度30分まで南下、最後の停船観測ののち、進路を300度(北が0度、時計回り)にとり、やや西進しながら海氷から離れたところまで北上し、その後西進する予定。海面水温は、0℃以下だが、33~34パーミル程度の塩分を含む水は、0℃では凍らない。天候は、雪、12m/sec程度の東の風が吹きすさび、停船をしていると寒い。

昨日より「しらせ大学」(聴講生は自衛隊員、講師は観測隊隊員)が開講されている。今日はペンギンの話と大型大気レーダー(PANSY)のお話。

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