南極通信⑥―第58次南極地域観測隊の活動を写真付きで紹介―(12月24日~26日)

福岡大学理学部・林政彦教授(地球圏科学科)が、第58次日本南極地域観測隊の一員(福岡大学海外研究員)として、11月末にオーストラリア西海岸フリーマントルで南極観測船「しらせ」に乗船。12月22日、南極大陸に上陸しました。約40日間の滞在期間中、無人航空機を用いた大気微粒子観測、大気放射・降雪・雪面観測などを実施し、南極大陸上の大気と氷床の相互作用が環境変動に及ぼす影響の解明に挑みます。

林教授からは連日、観測隊の様子について写真とコメントが寄せられています。本コラムでは、南極における日本の南極地域観測隊の活動の様子を、第58次南極地域観測隊員である林教授の観測隊生活を通じて、広く社会に広報することを目的に紹介していきます(日時は現地日時)。

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クリスマスイブの日の真夜中の太陽と雪上車

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目の前に広がる大雪原

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機械モジュール

【12/24】S16・17に来て3日目。とにかく、直前まで誰も活動していなかった施設での観測を安心してできるように、建物の整備など、いわゆるファシリティの準備をして、生活を確立しなければならない。まず生活を確立すること。それなくして、観測はあり得ない。

寝ていても起きていても身の回りにいるのは、われわれ6人のみ。この6人で生活の全てを確立し、観測まで運用しなければならない。7時に朝食(パンと目玉焼き、その他)をとり、8時から雪上車の慣らし運転。8時45分に、S16前進拠点に向かい、昨日荷受けした総重量6トンの荷物の仕分け。すぐに必要な食料等のいろいろな荷物の選別。そして、大型のそり2台のウィンドスクープからの引き出し。このそりは推定重量7トン(?)。意外とすんなり引き出しができた。チームワークのたまものだと感じた。

午後は、観測露場の選別。個人の就寝場所の決定と生活環境(就寝場所等)の整備。私は、観測用の電源の確保をどうするかの判断を行った。電源をどこから取るかによってもそりや雪上車の配置などが異なる。

ちなみに、今日はクリスマスイブ。われらがS17でもシェフおじさん(メンバーの小塩さん)がイブらしい料理を準備してくれた。メンバーの小西さんが準備してくれたシャンパンもはじけて、「Happy Christmas!!!」気分もはじけて、気持ちよく酔っぱらった。

ちなみに、このレポートは、就寝前、南極大陸の大雪原を目の前にしながら書いている。ふと、思い出したこと。今日は、冬至(南極では夏至)。夜中でも太陽は沈まないし、真夜中の太陽高度角が一番低い時。最初の写真は、瀬戸乗車をシルエットにした、クリスマスイブの日の真夜中(0時半の太陽)。

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S17拠点小屋

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ゴミそり

【12/25】クリスマスイブ明けの25日、日曜日。 南極大陸上の生活の確立へ拠点整備、生活環境確立の作業が本日も続いた。

寝泊りする場所は、雪上車に泊まる人3人。居住橇(そり)と呼んでいるそりに乗せた6人就寝可能な小さな小部屋に2人。食堂に1人。私は、雪上車組。雪上車内に生活用具など一式を運び込み、2段ベットで眠る。

観測、生活をしていくためには、ヘリコプターで運んだ6トンの荷物(観測機材、生活物品、食料等)を荷受けした日本南極地域観測隊の大陸観測の拠点になっているS16(内陸旅行拠点)から運ばなければならない。この間の距離は約1km。今日は、6人で荷物をそりに積んで、雪上車でそりをS17に運ぶ。午後は、それぞれの生活物資や観測物資の整理にあてた。

また、今日から、当直業務と生活用水づくりを始めた。当直の主な仕事は水づくりとゴミの処理。雪、氷は無尽蔵にあるが、これを溶かさなければ、生活には使えない。きれいなバケツに拠点周辺の雪を入れて、発電機の排熱のための温風に当てて溶かす。最近は、国際的な条約により南極での活動で生じるゴミや排泄物もきちんと処理することになっている。たまったゴミ等をそり(写真)に移すのも当直の仕事。

 

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ガソリンスタンド

【12/26】引き続き観測拠点整備を行う。そりの配置変更、S17拠点小屋の命綱・発電機用の燃料の給油作業など。発電機はディーゼルエンジン。燃料は、南極経由と呼ばれる低温でも粘性が高くなりにくい軽油を使っている。これをそりに積まれたドラム缶から給油する。南極大陸のガソリンスタンドである。

拠点に入ってから、比較的穏やかな日が続いていた。朝は風がやや強いが、午後3時ごろになるとほぼ無風になる。風が弱く太陽は沈まないためさほど寒くは感じない。作業をしていると防寒着を着ていることもあるが、汗をかくほどである。

「温度とり」という、簡易気象観測装置を小西さんが竹竿にぶら下げて小屋の入り口近くに立ててくれた。昨晩の最低気温は、氷点下8度くらい。日中(といっても1日中太陽は出ているが)最高気温は氷点下4℃くらい。気圧は920hPaくらい。

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