〔研究者コラム〕ー「お酒をめぐる人と自然(第2回)」清酒の造りと「人」番外編ー

全5回シリーズで「お酒をめぐる人と自然」に関するコラムを紹介しています。今回は特別に第2回の番外編をお送りします。コラムを担当するのは二宮麻里准教授(商学部)です。

二宮准教授のプロフィールや研究情報等はこちらをご覧ください。

6月6日(金)、商学部の授業科目「日本の流通」において、第2回コラム後編で紹介した株式会社杜の蔵の代表取締役・森永一弘氏による特別授業が行われました。今回は「お酒をめぐる人と自然」番外編として、授業の様子をお伝えします。

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商学部2年次生以上を対象とした講義「日本の流通」では、市場経済における取引の循環をテーマに講義を行っています。6月6日(金)には、ケーススタディ特別編として株式会社杜の蔵代表取締役・森永一弘さんにご講義いただきました。酒造業は、原料栽培から生産、出荷まで非常に長い時間がかかり、多くの取引が必要な産業です。激動する酒類産業の中で、森永さんが経営者としてどのような意思決定をしてきたのか、話を伺いました。

講義の冒頭では、福岡国税局の方から「アルコールパッチ」を配布してもらい、自分の身体のアルコール耐性を調べました。また、酒類産業の概況と酒税についてもご説明いただきました。清酒業界は高度経済成長期以降、市場全体が長期的に縮小する中、価格競争が激化しました。杜の蔵は1994年、厳しい価格競争から脱却するために、販売先を限定した新ブランド「独楽蔵」を発売しました。2005年には醸造アルコールの添加を全廃し、酒米だけで清酒を製造することを決定。2007年には契約農家との酒米造りもスタートさせました。酒の長期熟成にも取り組み、特徴ある製品を生み出し続けています。清酒の魅力を伝えるイベントを企画し、消費者に直接アピールする機会の設定にも積極的に取り組んでいます。

森永さんは「種もみから酔い覚めまで 、常に経営者として厳しい責任感を持って取り組んでいる」と言われました。原料米について言えば単に完成品としての酒米を購入するだけではなく、種もみから始まる酒米栽培に農家と連携して参画すること、また、商品を販売して終わりではなく、清酒のたしなみ方も含めて、消費者ニーズを敏感に感じ取るアンテナを持つことも、酒造業の経営者に与えられた課題として取り組んでこられました。

講義後実施したアンケートでは、この言葉が特に印象的だったと多くの学生が回答しています。製造業の経営者が、原料調達から生産、流通、消費に至るまで、実際にどのように考え経営を行っているのか、その実態と厳しさを今回の講義によって、学生はよく理解することができたと思います。

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(写真)株式会社杜の蔵 代表取締役 森永一弘さん

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(写真)アルコールへの耐性を調べるパッチテストを実施

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