〔研究者コラム〕ー「お酒をめぐる人と自然(第2回)」清酒の造りと「人」前編ー

全5回シリーズで「お酒をめぐる人と自然」に関するコラムを紹介しています。コラムを担当するのは二宮麻里准教授(商学部)です。

二宮准教授のプロフィールや研究情報等はこちらをご覧ください。

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(前編)

米の収穫は9月。清酒の仕込みが始まるのは11月ごろ。熟成させてから、本格的に出荷されるのは、次の年の冬。蔵人(くらびと)の丹精込めた長期間の作業によって清酒は生み出されます。

1960年代、清酒製造の機械化・自動化・連続化が実現しました。しかし近年、より多様な味わいを求めて、手作業による伝統的製法を復活させる蔵元が数多く出現しています。

清酒は発酵食品です。こうじ菌と酵母という、微生物が持つ発酵の力を利用して造られています。微生物が「醸して」くれた自然の恵みを、私たちは「お酒」としてありがたく頂いている、というわけです。微生物が活発に活動できるように、好ましい環境を準備万端整えるのが「人」の役割です。

酒造りをしている人に話を伺うと、「お酒造りはあくまで微生物がしていることで、蔵人はその手助けをしているだけです」と淡々とおっしゃいます。しかし微生物は24時間活動する生き物です。昼夜を問わず2~3時間おきに、「まるで自分の子どものように」微生物の「世話」をしなければ、おいしいお酒はできないのです。

機械での自動製造や、大きな発酵タンクでの一括製造では、常に変化する発酵過程に細やかに対応することはできないといいます。手作業への回帰は、単に昔ながらの手法に戻ったのではなく、酒蔵の新たな取り組みの一環なのです。

後編では、株式会社杜の蔵(福岡県久留米市三潴町)の清酒製造工程を、一部ですがご紹介します。

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(写真)蒸米後、蒸しあがった米を取り出します

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(写真)酒母づくり。酵母によって、アルコール発酵が盛んに行われる様子

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(参考文献)

  • 酒類総合研究所編(2002)「お酒のはなし」『酒類総合研究所情報誌』、第1号
  • 二宮麻里(2014)「高度成長期の酒類流通とビール特約店制度の形成」『福岡大学商学論叢』第59巻第1号、近刊予定

(関連リンク)