〔研究者コラム〕「さまざまな民主主義のあり方~選挙から考える~(第4回)」―米独仏の大統領制の違い―

2016年・2017年にかけて欧州・アメリカ等の主要国で首脳を選ぶ選挙が行われています。今回のコラムでは、欧州3カ国とアメリカの選挙制度について、過去に在オーストリア日本国大使館経済班専門調査員を務めたこともある福岡大学法学部・東原正明准教授(専門:政治学)が、「さまざまな民主主義 のあり方~選挙から考える~」をテーマに全5回にわたってお伝えします。

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前回まで述べてきた、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカのうち、イギリス以外の各国には大統領が存在しています。

アメリカの大統領は、大統領選挙人を介して選出される制度にはなっているものの、連邦議会とともに国民から選ばれ、強い行政権を持っています。そして、各省の長官は大統領、副大統領とともに内閣を構成しています。

フランスでは、2017年に1977年生まれのマクロン氏が大統領となり、注目を集めました。任期5年の大統領は国民の直接選挙によって選ばれます。政府は、首相の任免などにおいて大統領に従属すると同時に、国民の直接選挙によって選ばれる国民議会の信任を必要としています。したがって、大統領の統治は議会内多数派に依拠しなければなりません。こうした統治形態を「半大統領制」といいます。選挙結果によっては、国民議会多数派と大統領の党派が異なることもあり、両者が共存する状況であるコアビタシオン(保革共存政権)が生じることがあります。

さらに、ドイツにも大統領は存在します。しかし、ドイツの大統領は国民の直接選挙によって選ばれるのではなく、連邦議会(下院)議員と、それと同数の各州議会議員代表とによる連邦集会において選ばれます。大統領は国家を代表しますが、その権限は主に儀礼的なものに限定されていています。アメリカやフランスの大統領と異なって、実質的な権限は持っておらず、行政は連邦議会多数派の信任に依拠する連邦政府によって行われます。

<参考文献>

  • 池谷知明、河崎健、加藤秀治郎編著『新西欧比較政治』(一藝社、2015年)
  • 田口富久治、中谷義和編『比較政治制度論(第3版)』(法律文化社、2006年)
  • 馬場康雄、平嶋健司編『ヨーロッパ政治ハンドブック(第2版)』(東京大学出版会、2010年)

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<東原准教授の著作>

  • 「オーストリア ―協調民主主義体制の発展と変容―」(津田由美子、吉武信彦編著『世界政治叢書3 北欧・南欧・ベネルクス』ミネルヴァ書房、2011年) 
  • 「オーストリアの脱原発史」(若尾祐司、本田宏編『反核から脱原発へ ドイツとヨーロッパ諸国の選択』昭和堂、2012年) 
  • 「中央集権的な連邦制下の分権的政党 ―オーストリアにおける連邦制と州政治の変容―」(松尾秀哉、近藤康史、溝口修平、柳原克行編『連邦制の逆説? 効果的な統治制度か』ナカニシヤ出版、2016年)

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