〔研究者コラム〕「さまざまな民主主義のあり方~選挙から考える~(第3回)」―アメリカ大統領選挙―

2016年・2017年にかけて欧州・アメリカ等の主要国で首脳を選ぶ選挙が行われています。今回のコラムでは、欧州3カ国とアメリカの選挙制度について、過去に在オーストリア日本国大使館経済班専門調査員を務めたこともある福岡大学法学部・東原正明准教授(専門:政治学)が、「さまざまな民主主義のあり方~選挙から考える~」をテーマに全5回にわたってお伝えします。

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イギリスやドイツでは議院内閣制の下で内閣がつくられます。そのため、議会選挙は行政府を作るために重要な意味を持ちます。フランスでは、のちに述べるように半大統領制と呼ばれる形態がとられており、大統領と首相が共存しています。これに対してアメリカでは、大統領は国民によって選ばれる行政府の長であり、大統領選挙が大変重要です。

2016年の大統領選挙は、トランプ氏の言動や政治スタイルもあって、非常に注目されました。アメリカという国家の動向が世界の平和と安定に大きな影響を与えてきたことを考えれば、どのような政策を掲げる人物が大統領となるかは重要なことでしょう。それでは、アメリカでは、大統領はどのようにして選ばれるのでしょうか。

アメリカの大統領は任期が4年で、再選は一度だけ認められ、三選は禁止です。選挙の年に民主党と共和党では、各州から全国党大会へ派遣される代議員が選出されます。そして、この代議員による全国党大会で両党の大統領・副大統領候補が決定され、選挙戦が始まります。その後、11月第一月曜日の次の火曜日に有権者は大統領選挙人を選出し、大統領選挙人は12月第二水曜日の翌週の月曜日に大統領と副大統領を選びます。

当選した大統領と副大統領は、翌年1月20日に就任することになります。当選するための要件は大統領選挙人の過半数を獲得することであって、有権者が大統領選挙人を選ぶ一般投票の過半数を得る必要はありません。

次回はアメリカ・フランス・ドイツの大統領制の違いについてお話しします。

  • <参考文献>
    田口富久治、中谷義和編『比較政治制度論(第3版)』(法律文化社、2006年)

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<東原准教授の著作>

  • 「オーストリア ―協調民主主義体制の発展と変容―」(津田由美子、吉武信彦編著『世界政治叢書3 北欧・南欧・ベネルクス』ミネルヴァ書房、2011年)
  • 「オーストリアの脱原発史」(若尾祐司、本田宏編『反核から脱原発へ ドイツとヨーロッパ諸国の選択』昭和堂、2012年)
  • 「中央集権的な連邦制下の分権的政党 ―オーストリアにおける連邦制と州政治の変容―」(松尾秀哉、近藤康史、溝口修平、柳原克行編『連邦制の逆説? 効果的な統治制度か』ナカニシヤ出版、2016年)

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