〔研究者コラム〕ー「噴火史研究から浮かぶ火山のイメージ(第4回)」カルデラ形成噴火とカルデラ火山ー

全5回シリーズでお届けしているコラム「噴火史研究から浮かぶ火山のイメージ」の第4回です。コラムを担当するのは、奥野充教授(理学部地球圏科学科・国際火山噴火史情報研究所長)です。

2014年9月の御嶽山の水蒸気噴火は多くの尊い命が奪われる戦後最悪の火山災害となりました。この他にも桜島をはじめ、口永良部島や阿蘇山、箱根山で噴火が起こるなど、日本列島の火山は活動期に入ったように見えます。この連載コラムでは、「火山噴火とは何か」という基礎的な話から噴火史の規則性や火山噴火の防災・減災まで取り上げます。

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福岡大学がある九州島には、阿蘇カルデラ(熊本県・図1)などカルデラ火山(図2)が多くあります。火山の地形といえば、成層火山である富士山(静岡県・図3)のように山頂火口を中心にした円錐形を思い浮かべますが、阿蘇カルデラをはじめとするカルデラ火山は、「カルデラ」がスペイン語で「お鍋」を意味するようにへこんだ形をしています。このカルデラは、火口と違ってこの大きなへこみ地形の全体から噴出物が出た訳ではなく、それまで地下にあった大量のマグマが一時期に噴出した結果、陥没したと考えられます。

このようなカルデラを形成する噴火では、大規模火砕流堆積物が噴出します。阿蘇カルデラでは、4回の大規模火砕流噴火が起こっていることが知られていて、最新のものが約9万年前の阿蘇4火砕流堆積物です。火砕流堆積物は、火山灰や軽石などが高温のまま周辺に流れ下ったもので、一部は堆積した場所で溶け固まり、溶結凝灰岩とよばれる岩石になります(図4)。

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(図1)阿蘇カルデラ北西縁から見た阿蘇谷と阿蘇五岳(2006年10月25日撮影)。カルデラ底には田畑が広がっている。五岳のうち、写真左端の根子岳は阿蘇4火砕流よりも古く、その他はそれ以降に形成された後カルデラ火山。

 

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(図2)火山地形の分類(守屋、1992を簡略化)。カルデラ火山では、カルデラ内に小規模な火山があり、周囲に火砕流台地が広がっている。成層火山とカルデラ火山は、複数回の噴火で火山体を成長させるのに対し、溶岩ドーム、スコリア丘、マールなどは、1回の噴火でできるため、単成火山と呼ばれる。

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(図3)成田から福岡への航空便から見た富士山(2013年11月21日撮影)

 

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(図4)阿蘇4火砕流堆積物の溶結部からなる原尻の滝(2015年9月9日撮影)。
溶結時に軽石粒がつぶれて生じた黒曜石のレンズや柱状節理が見られる。
 

カルデラ火山では、カルデラ中央や縁に小規模火山ができます。阿蘇では中岳や米塚などが小規模火山の例で、後カルデラ火山といいます。南九州では、桜島(鹿児島)が姶良カルデラ(第3回参照)、開聞岳(鹿児島県)が阿多カルデラの後カルデラ火山になります。中岳、桜島、開聞岳は成層火山ですが、富士山のように独立した火山に比べるとはるかに規模が小さくなります。

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