〔研究者コラム〕ー「噴火史研究から浮かぶ火山のイメージ〔第1回(下)〕」火山噴火とはー

全5回シリーズで「噴火史研究から浮かぶ火山のイメージ」と題したコラムをお届けしています(第1回は上下2回に分けてお届けします)。コラムを担当するのは、奥野充教授(理学部地球圏科学科・国際火山噴火史情報研究所長)です。

2014年9月の御嶽山の水蒸気噴火は多くの尊い命が奪われる戦後最悪の火山災害となりました。この他にも桜島をはじめ、口永良部島や阿蘇山、箱根山で噴 火が起こるなど、日本列島の火山は活動期に入ったように見えます。この連載コラムでは、「火山噴火とは何か」という基礎的な話から噴火史の規則性や火山噴 火の防災・減災まで取り上げます。

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マグマ噴火は、噴煙を出す「爆発的噴火」と溶岩を流出する「流出的噴火」に分けられます。ちなみに「水蒸気噴火」には、「爆発的噴火」しかありません。マグマ噴火では、地下のマグマ溜まりでのマグマの発泡が重要な役割を果たします。

「爆発的噴火」では,マグマ溜まりから地表への出口ある火口へ上昇していく途中で、「液体のマグマの中にガスが泡として存在する状態」から、「ガスの雰囲気の中にマグマ(固体または液体)が存在する状態」に変化し、この状態変化を「破砕(はさい)」、それが火口からどれくらいの深さにあるのかを「破砕深度」といいます。

破砕した状態で火口にまで達すると、そのまま大気中を上昇して「噴煙柱」を形成します。この噴煙柱には、スコリアや火山灰、そして軽石といった、「マグマが冷え固まった破片」が含まれていて、これらが上空の風に運ばれながらやがて地表に落ちて堆積します。また、噴煙が火口から溢れると、「火砕流」となって周辺に流れ下ります。このような爆発的噴火の産物を総称して「テフラ」と呼んでいます。テフラはギリシャ語で灰を意味する言葉です。

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昭和火口から噴煙を上げる桜島(2013年7月27日筆者撮影)
このときの火山灰はほとんど上昇せずに風に運ばれてしまい、噴煙柱は十分に形成されていない

一般に噴火の進行と共に、マグマに含まれるガス成分が減ってきますので、それに伴い破砕深度も火口に向かって上昇し、ついに火口にまで達すると、溶岩を流出する噴火に変わります。もちろん、最初から破砕深度が火口よりも低くない場合は,溶岩の流出だけの噴火になります。溶岩は「溶岩流」として流れ下ることが多いのですが、粘性(粘り気)が高かったり、平らな地面に噴出したりした場合には「溶岩ドーム」を形成します。

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南麓から見た由布岳(2007年4月29日撮影)。山頂には溶岩ドームがあり、山麓には火砕流が流れ下った

溶岩ドームをつくる噴火では,成長した溶岩ドームの一部が崩れ落ちて,岩塊と火山灰が混じり合った火砕流が発生することがあります。火砕流に伴って「火砕サージ堆積物」や「降下火山灰層」も形成されます。このような噴火活動は「雲仙普賢岳の平成噴火(1990~1995年)」によって一般にも広く知られるようになりました。同様の溶岩ドームは、有名な北海道の昭和新山の他、中部九州の由布岳や北アルプスの焼岳など日本各地にあります。

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雲仙普賢岳から流下する火砕流(1991年5月29日、尾関信幸氏撮影)
山頂の溶岩ドームは雲中で見えないが,火砕流本体から上昇する噴煙が見える

 

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