今回から全5回シリーズで「噴火史研究から浮かぶ火山のイメージ」と題したコラムをお届けします(第1回は上下2回に分けてお届けします)。コラムを担当するのは、奥野充教授(理学部地球圏科学科・国際火山噴火史情報研究所長)です。
2014年9月の御嶽山の水蒸気噴火は多くの尊い命が奪われる戦後最悪の火山災害となりました。この他にも桜島をはじめ、口永良部島や阿蘇山、箱根山が噴火するなど、日本列島の火山は活動期に入ったように見えます。この連載コラムでは、「火山噴火とは何か」という基礎的な話から噴火史の規則性や火山噴火の防災・減災まで取り上げます。
- 第1回:火山噴火とは(上)(下)
- 第2回:アラスカ・アリューシャン列島でのテフラ研究と考古学
火山噴火とは、地下から物質が急激に出てくる現象をいいます。噴出される物質は、噴火に関係したマグマからできた「本質物質」、それ以前の噴火でできた「類質物質」、火山と直接関係しない堆積岩や変成岩である「異質物質」の3つの種類があります。
噴火そのものは、本質物質(マグマ)が噴出するかどうかで「マグマ噴火」と「水蒸気噴火」に分けられます。水蒸気噴火は、地下の水蒸気の圧力によるものです。御嶽山や箱根山の噴火では、噴出した火山灰に本質物質が認められないため、「水蒸気噴火」であったと考えられます。2014年11月からの阿蘇・中岳の噴火では、マグマが発泡したスコリア(下図)が含まれているので、「マグマ噴火」と考えられます。
この他、マグマと地下水などの水が接触して起こる「マグマ水蒸気噴火」もありますが、マグマに由来する本質物質が含まれているので、マグマ噴火の一つと いえます。火山灰に「類質物質」や「異質物質」が多く含まれ,本質物質は少量であるような噴火をマグマ水蒸気噴火と言っているようです。
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