南極通信⑱―第58次南極地域観測隊の活動を写真付きで紹介―(3月9日~13日)

福岡大学理学部・林政彦教授(地球圏科学科)が、第58次日本南極地域観測隊の一員(福岡大学海外研究員)として、平成28年11月末にオーストラリア西海岸フリーマントルで南極観測船「しらせ」に乗船。12月22日、南極大陸に上陸し、約40日間、無人航空機を用いた大気微粒子観測、大気放射・降雪・雪面観測などを実施し、南極大陸上の大気と氷床の相互作用が環境変動に及ぼす影響を調査しました。3月13日現在、南極を離れ、東経150度を目指して南緯64度線を東へ航行しています。

なお、本コラムは、南極における日本の南極地域観測隊の活動の様子を、第58次南極地域観測隊員である林教授の観測隊生活を通じて、広く社会に広報することを目的に紹介しています(日時は現地日時)。

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薄氷で埋まるポリニア海面

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アデリーペンギンとコウテイペンギン

【3/9】朝、エアロゾル観測装置のメンテナンスを終えて、06甲板に出るとポリニアの海面は蓮葉氷の周囲が凍結した薄氷で覆われていた(写真)。しらせは、ポリニアを抜け、乱氷帯を通過。そして流氷帯へ。流氷帯では、ペンギンが氷板の上にたたずんでいた(写真)。この後、すぐに氷海を離脱するはず。そろそろペンギンも見納めか。

午前中には、「氷海航行用具納め」、引き続いて「通常航海第一直員、交代用意」、のアナウンス。いよいよ、氷海ともお別れだ。午後、しらせ大学最終日。講師陣(私もその一人)に立派な盾が送られた。

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工芸品

【3/10】今日は金曜日。朝食は6時15分と決まっている。金曜日の朝食には、サケの塩焼き。そして、金曜の昼はカレーライス。午後、南極工芸展が開催された。観測隊員からは、ミウラ折りのラングや昭和周辺の地図。雪結晶のレプリカ、南極の海水から精製した塩などが、自衛隊からもさまざまな作品(写真)が出品された。

昼過ぎには8の字航行が実施された。航海中時々行っている。しらせは、磁場(地磁気)を測りながら航海を続けているが、磁場の計測には、地磁気のほかに、船体が持つ地場の影響が混ざり込む。この船体磁場の影響を評価するために時々行っている。カイトプレーンの自動制御装置でも機体を回転させて、同じことをして、磁方位計測の精度を確保している。

そして、夜9時33分頃、南磁極付近(南緯64度11.9 分、東経136度13.6分?)付近を通過。船内で見れる磁場計測結果(画像)は、磁場がほぼ真下を向いていることを示している。すでに、福岡(東経131度)より東に来ている。さらに東へ、シドニーの真南、150度付近まで東進するずだ。

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磁場計測結果(PDFはこちら

【3/11】久しぶりの太陽。娯楽大会。将棋、オセロ、ダーツ、輪投げなど。全員参加のビンゴ大会で、医務長賞として、加湿器と自衛隊ご用達の非常用パンのセットをゲットした(写真)。加湿器は早速船室にセット。最近、髪の毛が帯電して、パチパチ、ペタペタとうっとおしかったので、大変助かった。

夕方、日没の直後に水平線上に満月。大気密度の違いによる光の屈折で少し歪んで見える(写真)。天気がいい一日だった。

【3/12】娯楽大会2日目。輪投げに挑戦。結果はほどほど。体がなまっているので、フリーマントル出港後はじめて、しらせの甲板を走る。30分。整理運動10分。そして風呂。ちなみに風呂は、海水風呂。もちろん、蛇口とシャワーは真水。夜、時刻帯変更。これで、日本より1時間早い時間となった。

【3/13】朝、東経150度(南緯64度)に到着。ここで8の字航行。停船海洋観測。そして、北上。一路シドニーを目指す。ただし、緯度1度ごとにXCTD観測を行うとのこと。北上を開始して早速揺れが来た。海水面温度もプラス3度前後になっている。これからは、どんどん暖かくなっていく。いよいよ、南極ともお別れということを思う。

夜、57次越冬の久保田さんと一杯やりながら話をした。実は、彼は福岡大学工学部の卒業生。昭和基地の電気設備担当で、越冬隊初参加。こんなところで福大関係者に会うとは、と互いに感心してしまった。

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加湿器と非常用パン by 自衛隊

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海上の満月

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