南極通信⑮―第58次南極地域観測隊の活動を写真付きで紹介―(2月20日~25日)

福岡大学理学部・林政彦教授(地球圏科学科)が、第58次日本南極地域観測隊の一員(福岡大学海外研究員)として、平成28年11月末にオーストラ リア西海岸フリーマントルで南極観測船「しらせ」に乗船。12月22日、南極大陸に上陸し、約40日間、無人航空機を用いた大気微粒子観測、大気放射・降雪・雪面観測などを実施し、南極大陸上の大気と氷床の相互作用が環境変動に及ぼす影響を調査しました。2月25日現在、アムゼン湾を離れ北上し、ケープダンレー沖を目指して航行しています。

なお、本コラムは、南極における日本の南極地域観測隊の活動の様子を、第58次南極地域観測隊員である林教授の観測隊生活を通じて、広く社会に広報することを目的に紹介しています(日時は現地日時)。

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雪結晶

【2/20】朝、雪が舞っていた。雪のために本日のヘリオペは結局中止。同室の隊員顕微鏡で雪の結晶の写真を撮り始めた。こちらも負けずに、カメラで雪結晶の写真を撮ってみる。

雪結晶は融けやすいので、毛が立っている手袋で受ける。しかも、結晶をクリアに撮るためには、黒い手袋がいい。カメラは、接写でシャッター速度を早くしたいのでISO感度は思い切って3200に。被写界深度をできれば深くしたいので、絞りは11ぐらいまで絞る。黒い手袋が背景だと、露出が長くなり過ぎるので、1絞り分ぐらい暗く映るように調整。これでも、シャッター速度が遅くてぶれるので三脚に固定して。オートフォーカスは、うまく作動しないこともあるので、マニュアルフォーカスで。こんな工夫をしたら、 雪結晶がそれなりにきちんと撮れた(写真)。樹枝状、つつみ型、板状、骸晶結構いろいろなタイプの結晶があった。そして、雲粒付きの結晶が多いのも特徴。

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さそり座と天の川

【2/21】昨日、夕方いったんは止んだ雪も、今日はまた大雪状態。朝の時点で、本日もヘリオペは中止とのこと。今日は57次越冬隊の方たちは、心理テストのようなことをやっていた模様。ドクターの越冬医学研究の一環らしい。極夜が人間の心理や作業効率等に及ぼす影響などなど。南極は、閉鎖社会でもあり、格好の医学研究の場にもなる。宇宙船等での人間の心理や行動のモデルにもなるらしい。積雪量は10cmを超えていそう。明日は、ヘリオペはできるのだろうか?

【2/22】本日も朝から雪。午後から良くなるかな?という予報もあったが、結局は降雪のためヘリオペはできなかった。夜、だんだん天気良くなってきた。深夜、控えめの艦内放送「オーロラが出た!見にも行きたかったが、今日は疲れているのでお休み。多分明日、天気は良くなるだろうとの期待を込めて。

 

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山々真っ白

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オーロラ

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船上ゾンデ観測

【2/23】朝から、天気がいい。ヘリオペは予定通りとの艦内放送。いつものように、第1観測室でエアロゾル観測装置のチェックを済ませて、06甲板(屋上)へ出てみると、大陸の山々が雪化粧(写真)。4日前と景色が一変していた。

そして、夜、期待どおりにオーロラが出た。磁力線に沿ったラインが見える。ユラユラとうごめく。雲の向こう側に光っているのが分かる、期待していた以上のオーロラだ。

【2/24】今日もまずまずの天気。アムンゼン湾最後のヘリオペの日。朝8時に予定通り飛び立っていった。そして、昼過ぎ、最後の船上の気象ゾンデ観測を行った(写真は、往路のゾンデ放球)。計画者の平沢さんによればS17のゾンデ観測も含め、70発。ヘリオペも、気球観測も58次隊最後のオペレーション。午後、予報どおり天候が崩れかけてきた。調査部隊を15時にはピックアップ。これが、58次隊最後のフライト。ヘリコプターは、最終フライトが終わると、ブレード(回転翼)を取り外して、格納庫(機体)や甲板(ブレードケース)に固定された。ヘリの固定、防錆作業を終えたしらせは、アムンゼン湾を離れ北上、ケープダンレー沖を目指して航海を再開した。

【2/25】朝から、海は荒れている。ケープダンレー沖を目指して、氷海のやや北側を氷海に沿うようにしてしらせは東へ進む。

 

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