南極通信⑯―第58次南極地域観測隊の活動を写真付きで紹介―(2月26日~3月2日)

福岡大学理学部・林政彦教授(地球圏科学科)が、第58次日本南極地域観測隊の一員(福岡大学海外研究員)として、平成28年11月末にオーストラリア西海岸フリーマントルで南極観測船「しらせ」に乗船。12月22日、南極大陸に上陸し、約40日間、無人航空機を用いた大気微粒子観測、大気放射・降 雪・雪面観測などを実施し、南極大陸上の大気と氷床の相互作用が環境変動に及ぼす影響を調査しました。3月2日現在、ケープダンレー沖観測を終了しアメリー棚氷から北東に向かって航行しています。

なお、本コラムは、南極における日本の南極地域観測隊の活動の様子を、第58次南極地域観測隊員である林教授の観測隊生活を通じて、広く社会に広報することを目的に紹介しています(日時は現地日時)。

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【2/26】朝、ケープダンレー沖着。今朝は、時刻帯変更があったために、昨日より1時間早く物事が進む。風も弱くなり、朝からサンプラーの着氷除去作業。第1観測室と06甲板で行っているフリーマントル出港からシドニー入港まで続くエアロゾル観測を、観測隊員、そしてしらせの乗員に紹介するためのツアーを開催することにした。ツアーというほどのものでもないが、題して「エアロゾルツアー」。募集開始。

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シャチの群れ

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逆台形氷山

【2/27】今日もシャチの群れがしらせの近くにやってきた(訳ではなく、しらせがシャチに寄っていった)。背びれはピンと立ち、背中は黒と白のツートンカラー(写真)。まさにシャチ!南極の海は、生物相が豊かだ。海鳥も多い。そして、海に浮かぶ氷山の形が、下の方が狭くなる「逆さ台形」のものが多いことに気付く(写真)。もしかしたら、単に今まで気付かなかっただけなのかもしれないが。

夜、エアロゾルツアーの準備をしていると、「オーロラが出た」とのこと。明日は、エアロゾルツアー。準備と睡眠確保のために外には出ず。と、かなり活発なオーロラが出たらしい。まあ、今日は、このまま寝よう。

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エアロゾルツアー

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串刺し太陽

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南十字星とカリーナ星雲

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逆さオリオンとオーロラ

【2/28】朝からエアロゾルツアーの準備。エアロゾルツアーの参加者、しらせ乗員39人、観測隊29人、総勢68人をS17の仲間4人とともに出迎える。寒風吹きすさぶ06甲板での紹介と計測装置が所狭しと並ぶ第1観測室での説明(写真)。メモを取りながらのしらせ乗員も多かった。皆さん熱心に聞いてくれた。観測を支援してくれる自衛隊の隊員、行動を共にしてきた観測隊の隊員へ、自分たちの観測の大切さなどを説明するのも大切なことだ。

明日から3月。5時ごろに日の出、20時ごろに日没。夜がだいぶ長くなってきた。日没時、蜃気楼に浮かぶ遠方の氷山の向こうに日が沈む。氷山に串刺しにされたような太陽が見られた(写真)。今日もオーロラが出た。今年は、夏隊もオーロラを何度も見ている。私は、と言えば、オーロラがあまり活発でないのをいいことに南十字星とカリーナ星雲の撮影に挑戦(写真)。そして、オーロラを前景に沈む逆さオリオン座(写真)の写真などを撮る。

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座礁氷山郡

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彩雲

【3/1】3月になった。観測の終了が刻々と近づいてくる。午前中にケープダンレー沖の停船観測が終了した。停船観測では、海底に係留計を設置。係留気球と同様に浮力を利用して海底から海洋中に計測装置を係留して観測を継続する。この係留計の回収は、2年後とのこと。やはり、地球観測は時間スパンの長い観測になる。

予定より早くケープダンレー沖の観測を終了したしらせは、南極最大の氷河が南極海に流れ出す形で作られているアメリー棚氷沖へ向かうとのこと。途中、ケープダンレーの沿岸に無数の座礁氷山の列(写真)を見る。空には彩雲も輝いていた(写真)。

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アメリ―棚氷

【3/2】未明にしらせは、アメリー棚氷の沖に到着。そのまま、棚氷が目の前に見えるところまでやってきた。その距離、数100m高さ30mとアナウンスされた棚氷先端が降雪の向こうから迫力を持って出迎えた(写真)。棚氷の絵の前にいたのは数分。雪が強くなり視界が不良となり、足早に「しらせ」は棚氷の前を去った。湾の外を目指して北東へ。

昨晩からメールが来ない、と思っていたら、LAN担当の隊員より極地研のサーバーの障害との連絡。復旧はいつだろう?とりあえず、通信は送っておくことにする。

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