廃棄プラスチックの高度マテリアルリサイクル

成形プロセス最適化で物理再生が可能であることが理論的に明らかに

福岡大学工学部化学システム工学科の八尾滋教授は、廃棄プラスチックの高度マテリアルリサイクル(=廃棄物を製品の原材料として再利用すること)に関する研究を進めています。

現在、マイクロプラスチックの海洋汚染問題など、廃棄プラスチックの地球環境に与える影響が大きくクローズアップされています。この問題解決のためには、資源循環を行うことが不可欠です。しかし、実際のマテリアルリサイクル率は10年以上30%程度で推移しており、増加する気配が見られません。このような状況で停滞している大きな要因は、マテリアルリサイクルされたプラスチックの力学特性がバージン品よりも大きく劣っていることにあります。この物性低下の原因は、太陽光や雨などによる化学劣化により分子量が低下する「化学劣化」と「内部の異物」によるものとされており、物性回復は不可能とされてきました。

これに対し八尾教授は、廃棄プラスチックの物性低下の主要因が成形履歴により内部構造が変異したための「物理劣化」であることを基礎的かつ理論的に明らかにしました。また、ごく簡単な操作で物性向上が可能であり、条件次第ではバージン品同等となることを実験的に示しました(図1)。

さらに、ごく最近これらを工業的に実現できる、樹脂溜まりを設置したペレタイザー(図2)を新たに考案しました。図3には、この新規ペレタイザーの効果を、従来のペレタイザーを利用したものやしていないものと比較した結果を示しています。図からも今回新規に開発したペレタイザーで成形したものは、運転条件が変わっても安定的に良い特性を示すことを明らかとし、その効果を実証いたしました。

これらの知見は、廃棄プラスチックの高度なマテリアルリサイクルを実現するものであり、地球環境ならびに資源循環に大きく寄与するものです。

・図1から図3はこちらをご覧ください。

※本研究は、(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(3-1705)により実施されたものです。
※8月30日(木)・31日(金)に東京ビックサイトで開催される「イノベーションジャパン2018」に出展します。

 

  • 【お問い合わせ先】
    福岡大学 工学部化学システム工学科 八尾 滋 教授
    電話:092-871-6631(代)(内線:6420)
    Email:shyao★fukuoka-u.ac.jp
    (メールを送る際は、「★」を「@」に変えてください。)