〔研究者コラム〕ー「景観デザインによる安全安心まちづくり―警固公園のリニューアル(最終回)」リニューアルがもたらした波及効果ー

2014年10月1日(水)、柴田久教授(工学部社会デザイン工学科)を中心に「景観まちづくり研究室」が再整備に携わった警固公園がグッドデザイン賞を受賞しました(ニュース記事)。全5回シリーズで「景観デザインによる安全安心まちづくり―警固公園のリニューアル―」と題して、警固公園再整備事業の経緯や設計プロセスとともに、公園の再整備がもたらした効果について柴田教授が紹介してきましたが、今回が最終回となります。

柴田教授のプロフィルや研究情報等はこちらをご覧ください。

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■リニューアルがもたらした波及効果

公園の再整備から約1年後の2013年11月29日(金)、警固公園に隣接したソラリアプラザが公園側の外壁を改修し、リニューアルオープンした【写真】。ソラリアプラザの改修に関して、プラザを所有・管理している西日本鉄道株式会社の広報室は「平成24年度に刷新した警固公園の美しい眺望を最大限に活かすため、1階から6階までの外壁(南側エントランス)をガラスにする」と伝えた。新しくオープンした公園側の店舗には、これまであった2階のカフェに加え、プラザ内の他の飲食店も移転し、「警固公園が一望できるカフェ」として売り上げを向上させている。

これを受け、筆者らはソラリアプラザの館長ならびに副館長に対して直接ヒアリングを行い、改修の目的について話を伺った。館長からは「警固公園の改修をきっかけに、これまで背を向けてきた警固公園側にも玄関口を置きたかった」との回答が得られた。また同様に「外壁のデザイン検討の際、公園に隣接する商業施設という特性を活かすため、外壁面に緑を多く取り入れ、警固公園とのデザイン的な一体化が第一コンセプトである」ことも把握された。

一方、2013年1月22日に第13回警固公園対策会議が開かれ、公園改修前後一年間(整備前では工事期間を含む)の犯罪情勢について報告があった。これによると公園内の少年補導件数は20件(-35.4%)、天神警備交番管内の110番件数も-8.8%とどちらも減少したことが明らかとなった。さらに悪質さが問題視されていた「ハント族」も見られなくなり、公園の再整備が体感治安の向上に寄与していることが確認されている。また警固公園に隣接する警固神社の宮司、前田智文氏からは「公園の再整備後、神社の参拝客が増加した」との報告もあった。

■おわりに

現在、警固公園では多くの利用者とともにさまざまなイベントが行われ、昼夜を問わず市民の憩いの場所となっている。警固公園の再整備事業は、景観デザインに通じる設計手法が、安全安心まちづくりに寄与した事例と位置付けられるかもしれない。全国の都市公園を中心とした安全・安心まちづくりの活動展開に少しでも役立つ知見となれば望外の幸せである。

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【写真】公園側の外壁を改修したソラリアプラザ

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