〔研究者コラム〕ー「景観デザインによる安全安心まちづくり―警固公園のリニューアル(第3回)設計コンセプトと完成した公園のデザインの特徴」ー

2014年10月1日(水)、柴田久教授(工学部社会デザイン工学科)を中心に「景観まちづくり研究室」が再整備に携わった警固公園がグッドデザイン賞を受賞しました(ニュース記事)。全5回シリーズで「景観デザインによる安全安心まちづくり―警固公園のリニューアル―」と題して、警固公園再整備事業の経緯や設計プロセスとともに、公園の再整備がもたらした効果について柴田教授が紹介します。

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第2回で紹介した検討結果の下、再整備された警固公園のデザイン的な特徴について以下に述べておきたい。

(1)中央園路と円形石段(ベンチ)の設置

まず前述した築山の撤去とともに公園の北西部と南東部をつなぐ中央園路を新たに設け、利用者の往来と見通しの向上を図った。また、改修前より円弧状に設置され、多くの利用者に親しまれてきた石のベンチ等は、バリアフリー整備を施したうえで以前の形に戻すよう工夫し、新たに増設したベンチも同じように配置した。さらに芝生内に入れ込むことで迷惑行為となっていたスケートボードやピストバイクの不適切な利用を抑制させた。また本ベンチにはLEDによる演出照明を取り付け、夜間における公園の雰囲気づくりと安全性の向上を目指した。

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(写真)改修前と改修後の警固公園中央部。築山を撤去して中央遠路を設け、見通しが向上した。

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(写真)演出照明を組み込んだ石のベンチ。

(2)見通し改善による周辺との視覚的つながり

築山の撤去とともに新規に植栽した樹木の配置によって、公園北西部からの見通しとともにソラリアプラザ2階のカフェから園内が見通せるようにした。また人通りの少なかった南側園路において、老朽化し見通しを遮っていた公衆トイレを人目につきやすい西鉄福岡(天神)駅前に移設し、園路の形を修正するなど、東西につなぐ通路の見通しを改善した。同時に見通しを阻害していた樹木もトイレの移設にあわせて1本除去し、西鉄天神駅のホームから公園内の様子が眺められるようにした。

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(写真)改修前と改修後の南側通路。樹木とトイレの撤去によって、見通しが改善している。

(3)オープンスペースと芝生空間の拡充

公園の北西部,南西部,南東部の出入口付近にオープンスペースを確保し、園内への動線やアクセス性の向上を図った。加えて旧公園にあった池と築山の撤去にあわせて中央広場を設置し、市民や近隣企業、福岡県警等によるイベントの開催場所として利用しやすい空間を目指した。また旧警固公園の円形を基本とする舗装パターンを継承し、園内にデザイン的な一体感を与えた。加えて公園全体に芝生空間を増やし、公園西側には前述した石のベンチを組み込んだ「みはらしの丘」を設置、園内の光景を楽しめる休憩スペースとした。

(4)天神警部交番・安全安心センターの設置

警固公園の治安維持のため、2013年12月に公園北西部に天神警部交番とこれに併設した「安全安心センター」が開所された。同センターは自首防犯、少年非行の防止や環境美化などの安全安心まちづくり活動に関する会議や打ち合わせ場所として、無料で利用できる。現在、前述した防犯ボランティアの待機場所にも利用され、「安全安心まちづくりの相談窓口」も開設されている(毎週月・水・金曜日10:00~16:00)。一方で公園再整備後の現在、前述した警固公園対策会議からの引き継ぎを受け、市民も構成員である「警固公園利用推進会議」が中央区役所内に発足され、上記センターの有効利用について協議が始まっている。
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