〔研究者コラム〕「さまざまな民主主義のあり方~選挙から考える~(第2回)」―ドイツの選挙―

2016年・2017年にかけて欧州・アメリカ等の主要国で首脳を選ぶ選挙が行われています。今回のコラムでは、欧州3カ国とアメリカの選挙制度について、過去に在オーストリア日本国大使館経済班専門調査員を務めたこともある福岡大学法学部・東原正明准教授(専門:政治学)が、「さまざまな民主主義 のあり方~選挙から考える~」をテーマに全5回にわたってお伝えします。

  • 東原准教授の詳細プロフィルはこちら
  • <今後の更新予定>
    第1回:イギリス、フランスの選挙
    第3回:アメリカ大統領選挙
    第4回:米独仏の大統領制の違い
    第5回:ポピュリズムの時代なのか

00_line-top.gif

20170804-1.jpg

小選挙区制を採用するイギリスやフランスの選挙制度と比較して、ドイツの制度は大きく異なるものです。かつてナチスの独裁を経験したこの国では、どのような選挙制度の下、民主主義体制が守られているのでしょうか。

2017年はドイツでも総選挙が行われる年です(9月24日に実施予定)。ドイツの選挙もまた、メルケル政権に対する評価や外国人に厳しい態度をとる「ドイツのための選択肢」という政党の動向が注目されるなど、世界の関心を集めています。

ドイツの連邦議会は、「小選挙区比例代表併用制」と呼ばれる制度によって選出されます。日本では、衆議院議員選挙において「小選挙区比例代表並立制」を採用していますが、この制度では小選挙区制と比例代表制という二つの原理に基づいて議員が選出されます。それに対して「併用制」では、まず各政党へ議席が比例配分されます。そして、小選挙区当選者に優先的に議席が割り当てられ、残りの議席を各党の比例名簿の上位から配分していきます。

したがって、ドイツの選挙制度は、基本的には政党の比例名簿に投票する比例代表制であるといえます。同時に、小選挙区部分において有権者は、当選させたい候補に投票することも可能になっています。さらに特徴としては、比例代表で総得票の5%以上獲得できず、かつ小選挙区において3議席を獲得できなかった政党には議席が配分されません。この阻止条項によってドイツでは、小党乱立が抑制されることになります。

次回は2016年に実施されたアメリカ大統領選挙についてお話しします。

<参考文献>

  • 池谷知明、河崎健、加藤秀治郎編著『新西欧比較政治』(一藝社、2015年)
  • 田口富久治、中谷義和編『比較政治制度論(第3版)』(法律文化社、2006年)
  • 馬場康雄、平嶋健司編『ヨーロッパ政治ハンドブック(第2版)』(東京大学出版会、2010年)

00_line-top.gif

<東原准教授の著作>

  • 「オーストリア ―協調民主主義体制の発展と変容―」(津田由美子、吉武信彦編著『世界政治叢書3 北欧・南欧・ベネルクス』ミネルヴァ書房、2011年)  
  • 「オーストリアの脱原発史」(若尾祐司、本田宏編『反核から脱原発へ ドイツとヨーロッパ諸国の選択』昭和堂、2012年)  
  • 「中央集権的な連邦制下の分権的政党 ―オーストリアにおける連邦制と州政治の変容―」(松尾秀哉、近藤康史、溝口修平、柳原克行編『連邦制の逆説? 効果的な統治制度か』ナカニシヤ出版、2016年) 

00_line-top.gif

小バナー.png