〔研究者コラム〕「ミツバチからのメッセージ(第3回)」―福岡大学と福岡三越の新たな挑戦―

私たちの日常でも出会うことがあるミツバチや蝶。ミツバチや蝶が私たちの生活を支えていることを知っていますか?

今回のコラムでは、生物学を専門としてミツバチの研究を行っている福岡大学理学部地球圏科学科の藍浩之助教が「ミツバチからのメッセージ」というテーマで5回にわたってミツバチの社会、ミツバチの能力そしてミツバチを取り巻く自然環境についてお伝えしています。

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大学構内の雑木林でシロナンテンの蜜を吸うミツバチ

2018年冬、福岡では珍しく雪が降り積もった日があり、ミツバチには非常に厳しい冬でした。そんな厳しい冬を乗り越え、福岡大学の片隅ではミツバチが盛んに採餌を開始しています。

さて、第3回コラムでは都市養蜂についてご紹介します。

ミツバチは季節を通してさまざまな花から蜜や花粉を採餌すると同時に、さまざまな植物の受粉を媒介する送粉昆虫でもあります。

そのため、人為的に開拓されて自然が失われた環境で、自然を維持したり、復活させたりすることができる生き物として、注目を集めている動物の一つです。

今回の話題は、都市養蜂、つまり人為的に開拓された環境で行われている都市養蜂です。

現在、日本のみならず、ニューヨーク、ロンドン、パリなどの大都市で、活発に養蜂が行われているのをご存知でしょうか?

一種の自然回帰の観点で始まったこの流れは、われわれミツバチ研究者にとってもうれしいニュースです。農薬の影響が少なく、また天敵のスズメバチもいないことから、都市部の養蜂はミツバチにとっては「都会のオアシス」なのかもしれません。

そんな時代の流れの中、東京の銀座で2006年から都市養蜂が始まり、同じく大都市である福岡でも、都市養蜂が始まっています。福岡三越では、「福岡天神みつばち部」の皆さんが2017年から屋上で養蜂を開始し、その秋から「福岡天神はちみつ」として店頭をにぎわしていたのをご存知の方もおられるかもしれません。

●「福岡天神はちみつ」についてはこちら(販売元・ラベイユのウェブサイト)

昨年の採蜜の様子

では、都市のミツバチは、どのような花から蜜を集めてくるのでしょう?自然の中で育ったミツバチと、採餌する花はどのように違うのでしょうか?

ミツバチは、巣から半径数キロの範囲に咲く花から蜜や花粉を採取し、巣に持ち帰ります。われわれ福岡大学のミツバチ研究チームは、最新のテクノロジーを用いて、ミツバチの採餌環境をモニタリングする研究を数年前から進めており、ミツバチを通して自然の変化を評価しています。

このたび、福岡三越「福岡天神みつばち部」の皆さんとコラボし、「都市養蜂におけるミツバチの採餌環境モニタリング」の研究を始めました。福岡から世界に向けて「都市養蜂の新たな可能性」を創造していきたいと思います。

福岡天神みつばち部の皆さんと筆者が、ミツバチが花から持ち帰った花粉の採取を行う

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