全6回シリーズで紹介してきた「花粉症」に関するコラムですが、今回が最終回となります。
紹介するのは、福岡大学筑紫病院耳鼻いんこう科の坂田俊文教授です。研究分野は「耳鼻咽喉科学」で、福岡大学筑紫病院耳鼻いんこう科の診療部長を務めています。
坂田教授のプロフィールや研究情報等については、こちらからご覧ください。
【最終回 「花粉症の治療(手術的治療)」】
保存的治療で効果がない場合には、手術によって症状を緩和します。詳しく説明をする前に、鼻腔の構造と働きについて触れておきます。鼻腔は呼吸をする際に空気の通り道となります。吸い込む空気は鼻腔を通過する時に暖められ、適度な湿気を含みます。また、粉塵(ふんじん)などの異物も除去されます。つまり、鼻腔はエアコンディショナーの役割を担っているということです。このため鼻腔には下鼻甲介など突起状の構造物があります(図左)。花粉症などのアレルギー性鼻炎では、下鼻甲介の粘膜が炎症を起こして腫れるので鼻づまりを起こします。
難治性の鼻づまりで苦しむ場合には、内視鏡を用い、鼻の穴から下鼻甲介余剰な突起を削って減量します。こうすると、花粉症で鼻の粘膜が腫れても、空気の通り道が確保されます(図右)。減量し過ぎるとエアコンディショナーの機能が損なわれるので注意しながら行います。
鼻水のコントロールが不良な場合には、鼻粘膜をレーザーや高周波電流で部分的に焼灼(しょうしゃく)します。焼灼された粘膜では毛細血管や鼻水の分泌が減り、鼻水の緩和が期待されます。ただし、一回の治療で広範囲を焼灼すると粘膜の機能が損なわれることがあるので、複数回に分けて行います。
このような処置でも鼻水のコントロールができないときは、鼻水の分泌を促す後鼻神経を切断します。後鼻神経は鼻腔の奥から手前に伸びており、通常は下鼻甲介の手術を行う時同時に処理します。効果は数年以上継続することもあります。
これまで6回に分けて花粉症の概要を紹介してきました。花粉症と向き合うためには、まず花粉症の性質を知ることが大切です。このコラムが少しでも皆さんのお役に立つことを願っています。