〔研究者コラム〕­-「花粉症(第5回)」 花粉症の治療(保存的治療)-

全6回シリーズで、「花粉症」に関するコラムを紹介しています。紹介するのは、福岡大学筑紫病院耳鼻いんこう科の坂田俊文教授です。研究分野は「耳鼻咽喉科学」で、福岡大学筑紫病院耳鼻いんこう科の診療部長を務めています。

坂田教授のプロフィールや研究情報等については、こちらからご覧ください。

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【第5回 「花粉症の治療(保存的治療)」】

花粉症治療の基本は、原因になる花粉の除去と回避です。衣類や洗濯物に付着した花粉を十分に払うことや、外出時のマスクや帽子、ゴーグルの着用は大切です。

現時点で治療の主流は薬物治療で、内服薬または点鼻薬を用います。医師は症状から重症度を分類し、「鼻アレルギー診療ガイドライン」という指針(図)を参考に薬剤を選択します。内服薬には多くの種類があり、花粉が侵入してから症状が出るまでのさまざまな過程を抑制します。代表的なものは第二世代抗ヒスタミン薬で、花粉とIgEが結合した時にマスト細胞から放出される化学物質のヒスタミンをブロックします。抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランディンD2・トロンボキサンA2薬も同様です。その他、IgE抗体産生を抑制する、Th2(2型ヘルパーT細胞)サイトカイン阻害薬などがあります。

単剤で効果のない場合は、異なる作用の薬剤を2・3種類組み合わせることもあります。花粉が飛散する1週間くらい前から内服を開始すると、より効果的です。一方、点鼻薬の主流はステロイド薬ですが、その他には抗ヒスタミン作用や化学物質の放出抑制作用を持つものがあります。市販の点鼻薬の多くは血管収縮剤です。即効性はありますが、長期連用によって鼻閉を悪化させるので注意が必要です。

薬物治療は症状を困らないレベルにまで軽くする対症療法ですが、アレルギー反応そのものを起こしにくくする治療法もあります。それはアレルゲン免疫療法で、減感作療法あるいは免疫的脱感作療法とも呼ばれます。具体的な方法としては、スギ花粉のエキスを定期的に皮下注射します。少しずつエキスの濃度を上げていくと、約2・3年の継続で花粉に反応しない体質になります(免疫寛容への誘導)。毎週欠かさずに根気よく継続する必要があり、成功率は70~80%くらいです。

最近、注射の代わりに口腔粘膜から花粉エキスを吸収させる舌下免疫療法が開発されました。近い将来、一般専門医で受けることができる見込みですが、リスクもありますので正しい理解が必要です。

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