〔研究者コラム〕「福岡の街に誕生する新しいバス交通システム"BRT"(第1回)」BRTとは何か

福岡市の都心部で、連節バスの試験走行が行われているのをご存じですか?これは福岡市が推進している「天神ビッグバン(※)」の一環として、都心部の効率的な交通ネットワークの構築を目指し福岡市と西日本鉄道(株)が共同で取り組んでいるもので、天神・博多・ウォーターフロントの都心3拠点をつなぐBRT(Bus Rapid Transit)の導入を予定して行われているものです。

今回のコラムでは、そのBRTシステムの構築に携わっている、本学工学部社会デザイン工学科の辰巳浩教授がBRTシステムについて詳しくお伝えします。

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BRTとは、Bus Rapid Transitの略で、通常の路線バスに比べて乗客を"速く""大量に"輸送することができるバス交通システムです。鉄道と路線バスの中間的な位置付けになります。

BRTの車両は、乗客を"大量に"輸送するため、連節バスが使用されるのが一般的です。ただし、連節バスを導入すれば何でもBRTかというとそうではありません。乗客を"速く"輸送するシステムが備わっている必要があります。そのため、渋滞や駐停車車両などの影響を受けないよう、一般の自動車を排除した専用の走行空間(バス専用レーンやバス専用道路など)を走行するのが通常です。

また、バスが信号停車する時間を短縮するため、交差点に近づくと、青時間を延長したり、赤時間を短縮したりするシステム(PTPS)が導入されるケースもあります。さらに、乗客が全てのドアから一斉に乗り降りできるよう、運賃の支払いをバスの車内ではなく、バス停で行う仕組みを導入している例もあります。

BRTは、1974年にブラジルのクリチバ市において世界で初めて導入されました〔下図:クリチバ市のBRT(撮影:榎本拓真氏)〕。その後、世界各国で導入が進められています。日本では、上述のような仕組みを全て備えた完全なBRTシステムの導入実績はまだありませんが、道路の中央にバス専用レーンを設けた事例や連節バスを導入した事例などがあります。

次回は、実際に福岡でどんなBRTシステムが検討されているのかをご説明します。

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クリチバ市のBRT(撮影:榎本拓真氏)

 

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中央走行式バス専用レーン(名古屋市)

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連節バス(神奈川中央交通)

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(※)天神ビッグバン
アジアの拠点都市としての役割・機能を高め、新たな空間と雇用を創出するため、天神地区において福岡市が行っているプロジェクト。

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