〔研究者コラム〕ー「マイナンバーで何が変わるか(第3回〔中〕)」行政の効率化と行政サービスの利便性向上ー

全5回シリーズでお届けしているコラム「マイナンバーで何が変わるか」の第3回(「上・中・下」の3回に分けてお届けします)です。コラムを担当するのは、井上禎男准教授(法学部)です。

井上准教授は、法学部で行政法、情報法を担当しています。行政法の中でも、特に情報法・情報政策が専門分野です。社会的には、経済産業省(原子力関係)や 福岡市などの情報公開・情報保全に関する委員、佐賀県や福岡県内の各自治体での個人情報保護に関する委員、プライバシーマークの審査委員等を歴任していま す。また、個人情報保護に関する審議会・審査会委員の立場から、複数の自治体でマイナンバー、特定個人情報保護に関する評価やその支援業務に携わっていま す。

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■「私」「本人」「個人」にとっての"メリット"は?

「私」の番号"自体"が行政や会社での種々の届出や申告などの手続きで必要になるとしても(手続は多少スムーズになるでしょうが)、そうした場面が必ずしも日常的ではないとすれば、"便利さ"や"メリット"を実感することはないでしょう。むしろ行政手続に限ってみると、住基カード【住民基本台帳法による「住民基本台帳カード」。有効期限内は使用可能。ただし、今年〔2015(平成27)年〕12月で新規発行は停止】の二の舞にならないとも限りません。

今回の個人番号(マイナンバー)制度では、2016(平成28)年1月以降、「個人番号カード」(下掲の様式参照)の交付を受けることができます。発行申請に際しては、来月(2015(平成27)年10月)以降、市区町村から住民票登録住所宛てに個人番号が記載された「通知カード」(下掲の様式参照)が送付されてきます。この通知カードと同封されている交付申請書を提出することによって、個人番号カードの交付が受けられます。

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【出典】 総務省ウエブサイト(2015年9月時点でアクセス可能)

通知カードは、個人番号カードの交付時に回収されます。個人番号カードは、本人確認のための身分証明書、カード搭載ICによる電子証明書を用いたe-Tax(国税電子申告・納税システム)等の各種電子申請、自治体が条例で定めるサービス(図書館利用証、印鑑登録証など)にも使用できます。

また、現在〔2015(平成27)年9月時点で〕はまだ議論の段階にありますが、2017(平成29)年4月から消費税が10%へと増税されることに伴う「還付」に、個人番号カードを用いることが検討されています。さらに今後は、戸籍や証券分野での個人番号制度・個人番号カードの利用範囲の拡大も検討されています。今後の対象分野や利用範囲の拡大が進んでくると、「私」「本人」「個人」のレベルで目に見える"メリット"を実感できるようになるのかもしれません。

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