〔研究者コラム〕ー「マイナンバーで何が変わるか(第1回)」「私」の番号は、どこで、何に使われるのかー

今回から全5回シリーズで「マイナンバーで何が変わるか」と題したコラムをお届けします。コラムを担当するのは、井上禎男准教授(法学部)です。

井上准教授は、法学部で行政法、情報法を担当しています。行政法の中でも、特に情報法・情報政策が専門分野です。社会的には、経済産業省(原子力関係)や福岡市などの情報公開・情報保全に関する委員、佐賀県や福岡県内の各自治体での個人情報保護に関する委員、プライバシーマークの審査委員等を歴任しています。また、個人情報保護に関する審議会・審査会委員の立場から、複数の自治体でマイナンバー、特定個人情報保護に関する評価やその支援業務に携わっています。

 

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今年(2015年)の10月から、住民票を有する国民一人一人に12桁の番号である「マイナンバー」(以降は「個人番号」と呼びます)の通知が開始されます。来年 1月からは、①社会保障(年金・雇用保険・医療保険・福祉分野の給付・生活保護などに記載)②税(申告・届出などに記載)③災害対策(被災者台帳作成 事務などに利用)の各分野の行政手続で、個人番号が必要になります。

もっとも、税や社会保険の手続を行うのは個人だけではありません。そのため①や②の分野では、行政のみならず民間事業者での取り扱いも生じます。つ まり、「私」が給与や報酬を受け取る立場にある場合、これを支払う側である会社やバイト先などでも、「私」や「私」の扶養家族の個人番号を源泉徴収票や支 払調書に記載しなければならなくなります。健康保険・厚生年金・雇用保険の被保険者資格取得届についても同様です。そうすると、税務署や年金事務所に対する行政手続上の関係で、民間事業者も「私」の番号や一定の「私」に関する情報を取り扱うことになるわけです。

次回以降は5回にわたって、「私」の番号である個人番号を付すことによって管理・流通される個人情報(これを「特定個人情報」と呼びます)を取り扱う行政、民間事業者に求められること、また「私」の番号や「私」の情報に「私」がどのように向き合っていくべきかについて、考えてみることにします。

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【追記】

本コラム掲載後の9月4日に、個人番号(マイナンバー)法の改正法が衆議院本会議で可決成立しました。主な内容は、本人の同意を条件として、2018(平成30)年以降に口座預金情報を個人番号と結びつけること(税務署による税務調査での残高情報の収集等)を可能にするというものです。

また今回の改正で、「メタボ検診」の記録についても2016(平成28)年から、予防接種の記録についても2017(平成29)年から個人番号と結びつけることが可能になりました。まずは、とりわけ公平な課税の徹底等を念頭に置くものと言えますが、今後も個人番号の利活用が広がりをみせることは必至でしょう。

また、必然的にわれわれの日常生活にも大きくかかわってきます。この点については、行政の効率化と行政サービスの利便性向上という観点から、第3回のコラムでふれることにします。

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