南極通信③―第58次南極地域観測隊の活動を写真付きで紹介―(12月15日~17日)

福岡大学理学部・林政彦教授(地球圏科学科)が、第58次日本南極地域観測隊の一員(福岡大学海外研究員)として、12月17日現在、南極に向かっています。

11月末に、オーストラリア西海岸フリーマントルで南極観測船「しらせ」に乗船。12月末には昭和基地に近い南極大陸上に観測拠点を設置する予定です。約40日間の滞在期間中、無人航空機を用いた大気微粒子観測、大気放射・降雪・雪面観測などを実施し、南極大陸上の大気と氷床の相互作用が環境変動に及ぼす影響の解明に挑みます。

林教授からは連日、観測隊の様子について写真とコメントが寄せられています。本コラムでは、南極における日本の南極地域観測隊の活動の様子を、第58次南極地域観測隊員である林教授の観測隊生活を通じて、広く社会に広報することを目的に紹介していきます(日時は現地日時)。

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テーブル氷山

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南極大陸

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アザラシ

【12/15】昨晩のうちに、アムンゼン湾の北方についたしらせは、進路を南にとり、一気に緯度を上げる。海氷は、海面の一面を覆うようになった(写真)。しらせは、1m近い氷を割りながら前に進む。きれいなテーブル氷山も見えるようになる(写真)。

昼前には、最初の地学の野外オペレーションが計画されているアムンゼン湾に到着。緯度は、南緯66度20分。前方に地学調査目的地、南極大陸が見える。一気に、南極モード。南極圏(南緯66度30分以南)はすぐそこ。今日は白夜だろう。

ここで停泊し、搭載してきたヘリコプターにブレード(回転翼)を取り付ける。天候さえよければ、明日、試験飛行。明後日には地質調査グループがヘリで野外へ。

 

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氷海

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皇帝ペンギン

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ヘリコプター

【12/16】昨日から、アムンゼン湾沖で停泊。午前、しらせ搭載ヘリコプター(写真)の試験飛行。その後、アムンゼン湾の中に入り込む。緯度は、66度30分を超えた、ということは、正真正銘の南極圏。海氷はびっしりと海面を覆う。その厚さは、1mを超える。

しらせは、ほとんど厚い氷を連続的に割りながら進んでいた。しかし、氷に阻まれ、後退してから再度前進して氷に乗り上げる「ラミング」を2回ぐらい行った。氷を割る音が不気味に船内に響く。

氷の上には、アザラシや皇帝ペンギン(写真)が、物珍しげに眺めたり、「しらせ」に驚いて、慌てて逃げたり、悠然と構えたり。

あすから、野外活動本格化。地学、生物グループが先陣を切って南極大陸へ。 ミーティングで隊長からS17へのオペレーション(私たちの移動)が3日早まる可能性があることを伝えられる。 あと一週間もないことになる。あわただしい毎日となりそうだ。

 

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オレンジ氷山

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沈まぬ太陽

【12/17】昨日から、アムンゼン湾沖で停泊。昨夜の停泊は、南極圏に入り込んでいる。深夜0時前後に甲板に出ても夕日が地平線上にあった(写真)。「沈まぬ太陽」がみられた。南極は、大気微粒子(エアロゾル、PM2.5)が非常に少ない。

太陽が地平線近くまで下がっても、まぶしいくらいの明るさ。同時に、周囲の、海氷、氷山、南極大陸、空を舞う鳥たちがオレンジ色に染まる(写真)。日本だと赤い夕焼け、南極の夕焼けはオレンジという印象が強い。絶景だった。、夜、寒い(多分氷点下5度くらい?)にもかかわらず、写真を撮りに出る隊員が多くいる。時を忘れて見とれる。

本日、初のヘリコプターを使ったオペレーションがあった。58次隊南極観測活動が本格化。隊員のみんながの顔は、自然と明るくなり、活力がみなぎってくる。アムンゼン湾でのオペレーションを終了し、しらせは、氷海を次のオペレーションポイントへ向けて、北上、西進を始めた。

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