水と窒素から再エネ電力でアンモニアを直接合成する技術開発を開始

カーボンニュートラルに貢献する技術として期待が高まる
福岡大学は、北海道大学、東京大学、デノラ・ペルメレック株式会社、株式会社IHIとともに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が公募した「NEDO先導研究プログラム/新技術先導研究プログラム」の「革新的なアンモニア電解合成技術の開発」に課題名「再エネ電力からの高効率NH3電解合成技術」として応募し、再エネ電力からアンモニアを直接合成する新たな技術開発の事業に採択されました(*1)。
アンモニア(NH3)は、化学肥料として大量に使用され、人類の食糧を支えています。我が国においては、アンモニアは燃焼してもCO2を発生しない「CO2フリー燃料」として、火力発電所などでの利用が期待されています。現在のアンモニアのほとんどは、化石資源から得られた水素と空気中の窒素から、ハーバー・ボッシュ法という触媒反応プロセスを用いて得られています。アンモニアの製造には大量のエネルギーが必要で、水素を化石燃料から作る際に大量の温室効果ガス(CO2)を出します。我が国でも再エネ電力の導入は進み、地域によっては余剰な電力が散見されます。従来の技術でも、再エネ電力で水の電気分解を行い、生成した水素と空気中の窒素からハーバー・ボッシュ法を用いればCO2フリーなアンモニア合成が可能です。しかしながら、変動が大きい再エネ電力と従来技術の組み合わせでは、水素貯蔵の必要性やプロセスの複雑化、コストの問題など、課題も多く残されています。
本事業では、再エネ電力の変動に対応ができる、水と窒素から1段階の電気化学装置でアンモニアを得るアンモニア合成法の技術開発を行います。福岡大学では2015年度から2019年度まで(2014年度に採択)、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)「再生可能エネルギーからのエネルギーキャリアの製造とその利用のための革新的基盤技術の創出/固体電解質を用いた電解セルの電極触媒高性能化によるアンモニア合成システムの開発(代表:成蹊大学)」に共同研究機関として参画し、電気化学装置によるアンモニア直接合成法の開発に着手し、独自の電気化学装置を考案しアンモニアの直接合成法の開発に端緒をつけました。本事業では、この技術を基として、電気化学セルの構造や触媒・電極材料の開発を進め、2年後の国家プロジェクト化を通して、将来的な本技術の社会実装を目指します。