再生医療において、移植細胞や細胞シートの安定供給は、持続的な医療の実現に寄与するだけでなく、低コスト化を導くため、「大量細胞培養法」や「細胞シート作製技術」の効率化につながり、再生医療の発展を加速化させる、未来の医療を担う重要な要因となります。
これまでに福岡大学薬学部薬物送達学櫨川舞准教授・同大工学部化学システム工学科八尾滋教授らの研究グループは、側鎖結晶性ブロック共重合体を用いた新規細胞シート作製法に関する研究に従事し、細胞培養特性が非常に高いだけではなく(細胞増殖速度は培養3日後に従来品の約3倍)、さらに加温により培養した細胞をシートの状態で剥離できる効率の良い細胞シート作製技術を見いだしています(特許第6989116号)。
今般、同グループはさらなる再生医療加速化のための新技術として、市販医薬品にも使用される安全なポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする生体適合素材で調製したフィルム状の細胞支持体を開発しました。本細胞支持体は、細胞シートを剥離する際に細胞に吸着させて使用することでハンドリングが向上し、シートに亀裂が入ることなく回収でき、また生分解性のため除去を不要とします。細胞シートの積層時にも有用です。さらに、細胞支持体自身に薬物を含有させ薬物をゆっくり放出させることも可能な高機能な細胞支持体です。
本技術は、令和4年度AMED橋渡し戦略的推進プログラムシーズA(九州大学)の採択課題関連技術であり、JST特許出願支援制度に採択された技術です。また福岡大学新技術説明会(5/31)、第71回高分子学会年次大会(5/26)でも発表予定です。