漢方薬がRSウイルス感染症に効果 麻黄湯の抗RSウイルス作用を解明

RSウイルス感染症は、主に赤ちゃんがかかるインフルエンザに似た感染症です。高熱や鼻汁、鼻づまりが症状ですが、時に肺炎をおこして入院治療が必要となることがあります。また、後に気管支喘息を発症する可能性が高まるとも言われています。全世界的にみると、特に発展途上国では毎年数万人の子供がこの感染症で命を落としています。しかし、いまだに有効な治療法はなく、ワクチンや治療薬の開発が急がれています。

福岡大学病院総合診療部の鍋島茂樹教授の研究グループでは、かねてよりウイルス感染症に対する漢方薬の効果を研究してきました。これまで、麻黄湯がインフルエンザに対してオセルタミビル(商品名タミフル)と同程度の効果があることを報告しています。今回の研究では、麻黄湯を構成する生薬のうち、麻黄と桂皮が、RSウイルス表面にあるGタンパクの特定の箇所に結合することを発見しました。また、Gタンパクに麻黄湯の成分が結合すると、ウイルスは細胞側にある受容体に吸着することができず、感染が成立しないことが分かりました。さらに、RSウイルスを感染させたマウスに麻黄湯を5日間投与すると、マウスに肺炎が起こらず、ウイルスもほとんど検出されなくなることも確かめました。

以上の基礎的研究より、漢方薬の麻黄湯はRSウイルス感染症に大きな効果が期待できます。麻黄湯は、すでに医療の現場で「風邪」に対して使用されている漢方薬です。この研究により、麻黄湯がRS感染症の治療薬として、日常の臨床に使用できる可能性が出てきました。鍋島教授の研究グループでは、今後臨床の現場で実際に麻黄湯がRS感染症に有効かどうかを、小児科と協力して検証する予定です。

本研究成果は、2022年1月6日、英国科学雑誌『Communications Biology』に掲載されました。

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