治療薬のない難治性転移がんの新規治療薬に応用

生体に安全な素材の生分解性ポリマーを使って、核酸をがん細胞に選択的に届ける独自の核酸製剤を開発

核酸医薬品は、脊髄性筋萎縮症(SMA)や筋ジストロフィーのようなこれまでに治療薬のなかった難治性・希少疾患に有効な新規治療薬として近年大きな注目を集めている医薬品です。

しかしながら、核酸は、血中の酵素で分解されやすく、また細胞膜を透過しにくく、速やかに腎排泄されてしまうため、そのままでは医薬品としての実用化が難しいとされています。核酸医薬品の実現には、核酸を届けたい細胞の中に安定的にかつ効率よく送り届ける医薬品設計技術の開発が必要不可欠です。

今般、福岡大学薬学部の櫨川助教らの研究グループは、抜糸のいらない縫合糸と同じ成分で安全性が確保された生分解性高分子のポリ乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)と核酸との複合分子(siRNA-PLGAハイブリッド)に加え、がん細胞に多く発現するタンパクに結合する分子を製剤設計に組み込むことで、がん細胞により多くの有効な成分を届ける製剤設計を開発しました。

今回開発した技術は、体内での医薬品の行き先を制御できるため、静脈内投与でがん患者さんの遠隔転移したがん細胞のみに有効成分を届けることが可能で、正常な細胞に影響を与えにくいため副作用を限りなく抑えることができます。

なお、本研究成果は、2021年8月18日(水)付けで英国総合科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

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    福岡大学薬学部免疫・分子治療学 助教 櫨川 舞
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    Email:mhaze★fukuoka-u.ac.jp
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