ダイナクチンはTDP-43蛋白質に結合し凝集化を制御する

―Perry病や筋萎縮性側索硬化症の病態解明と創薬への期待―

福岡大学医学部脳神経内科らの研究グループは培養細胞やiPS細胞を用い、遺伝性のパーキンソニズムをきたすPerry病(Perry症候群)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態の一部を解明することに成功しました。

筋萎縮性側索硬化症をはじめとするいくつかの神経変性疾患に共通する特徴は、本来は核に存在するべきTDP-43蛋白質の細胞質内での誤局在化と凝集化であるとされています。遺伝性のパーキンソニズムを示すPerry病は、TDP-43プロテイノパチーの一種です。その原因遺伝子であるDCTN1は、ダイナクチン複合体の最大のサブユニットをコードしています。しかし、DCTN1遺伝子の変異がTDP-43プロテイノパチーを引き起こす分子メカニズムは明らかになっていませんでした。今回の研究では、ダイナクチンがTDP-43蛋白質に結合することを発見し、ダイナクチンのN末端領域、dynactinドメイン、およびC末端領域がTDP-43蛋白質と選択的に相互作用することを明らかにしました。さらに、この相互作用の制御異常がTDP-43蛋白質の誤局在化と凝集化を引き起こす可能性を示唆しました。今回の研究から、ダイナクチンはTDP-43蛋白質の細胞質-核間輸送の新たな担い手であることが判明し、Perry病をはじめとする筋萎縮性側索硬化症などのTDP-43プロテイノパチーの病態解明と創薬につながると考えられます。

本研究成果は、2021年4月13日(火)付けで『International Journal of Molecular Sciences』にオンラインで公開されました。

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    福岡大学医学部脳神経内科 三嶋崇靖・坪井義夫
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