日産自動車と共同で自動車廃プラスチック (ASR回収プラスチック)の高度資源循環を実現

福岡大学工学部化学システム工学科の八尾滋教授は、日産自動車と共同で、廃棄自動車からのシュレッダー処理品(ASR)の高度再生を実現しました。

ASRとは、廃棄自動車から主要な金属部品やプラスチック部品を取り除いた後、全てを大型粉砕機で破片状にしたものです。しかし、一部取り除けなかった金属あるいは木片などが混じり合っています。従って、これまでは焼却処理しかできないものとして取り扱われてきました。そのようなASRに対し、今回日産自動車でこのASRからプラスチックの選別処理を行い、福岡大学でマテリアルリサイクルのためのペレタイズ処理を実施しました。その結果、最適化したペレタイズ処理を行うことにより、引張伸び特性や破壊に至るエネルギーを約2倍以上向上させることに成功しました。また、この性能は自動車製品でよく使われているバージン品の物性とほぼ匹敵するあるいは凌ぐものとなることも明らかにしました。

現在、海洋プラスチックゴミやマイクロプラスチックなどの廃プラスチックが地球環境に与える影響は大きな社会問題となっています。この問題解決にはプラスチックの高度なマテリアルリサイクル手法の確立が欠かせません。しかし、これまでの廃プラスチックは物性の再生が不可能な分子鎖切断(低分子化による化学劣化)を起こしているために、適用範囲の広く付加価値の高いマテリアルリサイクルは不可能とされてきました。また、再生品位の高いマテリアルリサイクルの実現には、精度の高い分別処理などが必要とされてきました。

このような常識に対し八尾教授は、物性低下の主原因は上述したような化学劣化ではなく、成形履歴による内部構造変異である物理劣化であること、さらに最適な再生処理を行うことで大きく物性再生が可能であることを見いだし、環境省やNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの外部資金を得て、また多くの企業との共同研究を通じ新たな再生プロセスに関する研究開発を行ってきました。今回の成果はこれらの研究成果の一環であります。

  • 【お問い合わせ先】
    福岡大学工学部化学システム工学科 八尾 滋 教授
    電話:092-871-6631(内線:6420)
    メール:shyao★fukuoka-u.ac.jp
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