Perry症候群の国際診断基準の確立

-Perry症候群の早期診断が可能に-

福岡大学病院神経内科、坪井義夫教授らのグループは、Perry症候群注1の国際診断基準を作成しました。本研究成果は『Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry』に掲載されました〔論文名:Establishing diagnostic criteria for Perry syndrome (doi: 10.1136/jnnp-2017-316864)〕。

◆本研究成果のポイント
① 国際共同研究によりPerry症候群の国際診断基準を作成した。
② 臨床、病理、遺伝学的疾患概念としてPerry症候群からPerry病への名称変更を提唱した。
③ Perry症候群の早期診断につながる。

1.研究の背景
Perry症候群は手足のふるえ、バランスの悪さ、動きのにぶさ、筋肉のかたさなどのパーキンソニズム(パーキンソン病様症状)、うつ症状、原因不明の体重減少、呼吸障害の4徴候を特徴とする遺伝性の疾患で、発症年齢が40歳代と若く、約5年の経過で死に至る疾患です。2009年に福岡大学病院神経内科と米国のMayo Clinicとの共同研究でDCTN1という遺伝子がPerry症候群の原因遺伝子であること、患者さんの脳にはTDP-43というたんぱく質の凝集体がみられることが明らかになりました。このTDP-43たんぱくの凝集は筋萎縮性側索硬化症の病理でも出現する、神経変性疾患に関わりの深い、細胞変性の機序を解明する鍵となる所見です。近年、Perry症候群の報告は増えていますが、確立した診断基準はなく、早期診断が困難な場合がありました。

2.研究結果
国内外のPerry症候群患者さんの臨床情報を集積し、国際シンポジウムを開催しました。国際共同研究により、Perry症候群の国際診断基準の作成に至りました。

≪Perry症候群の国際診断基準に基づいたPerry症候群の確実例≫

  • パーキンソニズムとパーキンソニズムの家族歴または中枢性の低換気や無呼吸の家族歴を伴い、DCTN1遺伝子変異を認める症例。
  • Perry症候群の4徴候を認め、DCTN1遺伝子変異を認める症例。
  •  Perry症候群の4徴候を認め、神経病理学的検討で黒質の神経細胞死とTDP-43病理を認める症例。

3. 今後の展望
Perry症候群の国際診断基準の確立によりPerry症候群の早期診断が可能となります。

4.論文名と著者

  • 論文名
    Establishing diagnostic criteria for Perry syndrome
  • ジャーナル名
    Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry
  • 著者
    三嶋崇靖1,2,藤岡伸助1,富山弘幸3,矢部一郎4,栗﨑玲一5,藤井直樹6,音成龍司7,Owen A. Ross2,8,Matthew J. Farrer9,Dennis W. Dickson2,Zbigniew K. Wszolek10,服部信孝3,坪井義夫1

≪著者の所属機関≫
1 福岡大学病院神経内科, 2 Department of Neuroscience, Mayo Clinic, 3 順天堂大学脳神経内科,4 北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野神経内科,5 国立病院機構熊本再春荘病院神経内科,6 国立病院機構大牟田病院神経内科,7 音成神経内科・内科クリニック,8 Department of Clinical Genomics, Mayo Clinic, 9 Department of Medical Genetics, University of British Columbia, 10 Department of Neurology, Mayo Clinic

5.用語説明
注1) Perry症候群
手足のふるえ、バランスの悪さ、動きのにぶさ、筋肉のかたさなどのパーキンソニズム、うつ症状、原因不明の体重減少、呼吸障害の4徴候を特徴とする遺伝性の病気で、呼吸障害で亡くなる方が多い。主にドパミン神経細胞に異常を生じることによる。現在、有効な治療法は確立されておらず、指定難病の一つである。

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