e-Learningシステムで学習すると 世界中の内視鏡医の診断能力が向上することを証明 この世界初の証明が『EBioMedicine』に掲載

福岡大学筑紫病院の八尾建史教授は、世界中の内視鏡医を教育するe-Learningシステムを世界に先駆けて開発しました。そして、世界35カ国、515人の内視鏡医に対しシステムの有効性を検証する研究を行い、「そのシステムを用いて学習すると内視鏡医の診断能力が向上する」ことを世界で初めて証明しました。本研究成果は、2016年6月9日(木)、Lancet誌とCell誌がサポートするオープン・アクセス雑誌『EBioMedicine』に掲載されました〔論文名:Development of an E-learning System for the Endoscopic Diagenosis of Early Gastric Cancer: An International Multicenter Randomized Controlled Trial. (doi:10.1016/j.ebiom.2016.05.016 ) (http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352396416301992)
 

  • 本研究成果のポイント
    ① e-Learningシステムを用いて学習すると内視鏡医の診断能力が向上する。
    ② 無制限に世界中の内視鏡医が、いつでもどこからでもe-Learningシステムにアクセスし、早期胃がんの診断法を学習可能。
    ③ e-Learningシステムは、大腸や食道など、他の臓器における内視鏡診断に関する教育にも応用可能。
【e-Learningシステム開発の概要】
 世界において胃がんは、がんでの死亡件数95万2,000件(2012年)のうち8.8%を占め、がんの中で3番目に多い死因となっています。八尾教授による中国や中南米の現地調査の結果、胃がん多発国のほとんどにおいて、「内視鏡で発見されている胃がんのうち早期の胃がんはわずか2%しかない」ということが判明しました。従って、がんが発見されてもほとんどが進行がんのため、患者さんの命を救えないという事実が明らかになりました。そこで八尾教授は、小さく平坦な早期がんを発見する方法が確立されていない現状を打破することがまず重要と考え、時間や距離の制約もなく世界中の誰もが利用できるインターネット回線を利用した新しい教育システムの開発に着手しました。その時期に、福岡大学研究推進部の研究支援プロジェクトに採択され、2011年度から2年間の援助を得て研究を進めます。世界中の内視鏡医に声を掛け、共にミーティングを開き、e-Learningの有効性を検証する試験を計画しました。そのテストには世界35カ国515人が参加を表明。内視鏡医をランダムで学習群と非学習群のグループに分けて調査を行ったところ、e-Learningを受講した内視鏡医は診断能力が向上しましたが、受講しなかった内視鏡医は全く向上しなかったという明確な結果を得ることができました。このシステムは世界中の内視鏡医に提供する予定です。それにより、世界の消化器がんの死亡率を減らすことができ、人類の生命・健康維持に大きく寄与することができると考えられます。

 

【お問い合わせ先】
福岡大学筑紫病院 管理課(企画経営担当)
電話:092-921-1011(代)(内線:1101)