世界初の発見 フッ素樹脂の表面特性を自在にコントロール

― 塗るだけで水性マジックで書けるように ―

福岡大学工学部化学システム工学科の八尾滋教授が、ポリテトラフルオロエチレン:フッ素樹脂の表面特性を、塗るだけで化学的に自在にコントロールできる手法を世界で初めて発見し、11月6日に「第23回ポリマー材料フォーラム」で発表します。

フッ素樹脂は焦げ付かないフライパンでよく知られている物質で、水も油もはじくような、化学的安定性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気絶縁性等に優れた素材として知られており、腐食性の強い酸や強アルカリを入れる容器や、強力な防汚性が求められる製品などに使用されています。しかしながら、フッ素樹脂は濡れ性が低いため、他の溶液や樹脂等を用いた処理が難しく、化学的に表面を改質することが難しい樹脂でした。そのため現在はプラズマ処理や強酸処理などで物理的に改質を行っていますが、これらの手法は分子鎖切断が伴うために力学物性が低下し、さらに影に当たる部分や細孔内は改質が難しく、課題の多くある手法でした。

しかし、今回の八尾教授らの研究において、構造最適化を行った側鎖結晶性ブロック共重合体と言われる高分子がフッ素樹脂と接着し、表面特性を改質できることが発見されました。どんな物質も接着させることができなかったフッ素樹脂にこの高分子は接着性を示し、この高分子の溶液を塗布するだけで、化学的に簡単に改質することができます。改質されたフッ素樹脂表面には水性マジックで文字を書くことも、他の樹脂と接着することもできます。また今まで困難だった影の部分や細孔内部など、物質と物質の隙間や曲面などにもこの技術を活用することができます。もちろん分子鎖切断もないため、力学強度の低下もありません。

八尾教授は2013年、長鎖アルカン鎖構造を持つ側鎖結晶性ブロック共重合体をポリエチレンに塗布することで、ポリエチレンの表面特性を自在にコントロールする手法を世界で初めて発見しました。その手法が他の物質で活用できないかと研究を重ねた結果、この技術がフッ素樹脂にも活用できることを発見したのです。現在、特許を申請中です。

八尾教授は宇部興産㈱高分子基礎研究部長や㈱三菱総合研究所シニアリサーチプロフェッショナル等を経て2011年に本学教員として着任。このように幅広い分野で多くの情報に接することができた環境にいたことが、今回の発見につながったとも話します。

●第23回ポリマー材料フォーラム
 【会期】11月6日(木)、7日(金)
 【会場】奈良県新公会堂(奈良市春日野町101)
 【主題】日本を元気にする高分子材料

【お問い合わせ先】
福岡大学広報課
電話:092-871-6631(代表)内線:4636