〔研究者コラム〕―「治験と臨床研究(第1回)」臨床研究から生まれるトクホと医薬品―

今回から全5回シリーズで「治験と臨床研究」と題したコラムを紹介します。コラムを担当するのは福岡大学病院臨床研究支援センター長の野田慶太教授です。

野田教授のプロフィルや研究情報はこちらをご覧ください。

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皆さんにも身近な医薬品や特定保健用食品(トクホ)が世に出るためには、国からお墨付きをもらう必要があります。そのお墨付きをもらうのに必要なのが臨床研究です。臨床研究とは、患者さんに参加してもらい、医学的な疑問を科学的に解決するための研究のことです。臨床研究はどのようにして進められているのか、以下に具体的な例を挙げて説明していきます。

医薬品やトクホの成分が効果があると認められるまで

例えば「Aという成分が体重を減少させる効果があるか」という疑問について。まずAが入った錠剤(A群)と、錠剤からAの成分だけを抜いた錠剤(O群)を準備します。これを50人ずつ3か月間飲んでもらい、体重の変化を調べます。その結果、体重がA群で平均1.5kg減少、O群で平均1.0kg減少したとしましょう。

ここで「成分Aに体重減少作用がある」と判断できるかといえばそうではありません。実は、ここで科学的な比較方法である「統計」を用いて計算しなければならないのです。この場合、作用があると判断できる条件は「A群がO群より体重減少量が大きくなる確率が95%であること(100回同じ実験をして95回A群の減少量がO群より大きくなること)」(専門的には正しい表現ではありませんが)。これが達成されればAが体重減少に有効であると科学的に証明されます。もし、成分Aが食品の成分であればトクホ、合成された化学物質であれば医薬品として商品化することが期待されます。

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臨床研究なしで認可されるかもしれないトクホ

ところで、来春より消費者庁の規制改革でトクホに認定される条件が大きく変わるようです。それは「食品成分の有効性が有名な論文で証明されていれば、自前の臨床研究がなくでも表示が認められる」というもの。その場合、付加価値の表示がある高価な食品を食することが、本当に健康増進につながるのでしょうか?もう一度よく考えてみなければならない時期が来るかもしれません。

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