〔研究者コラム〕ー「磁石と省エネルギー(第3回)」磁気の検出:ホール素子ー

全6回シリーズで、「磁力と省エネルギー」に関するコラムを紹介しています。紹介するのは、理学部物理科学科の眞砂卓史准教授で、研究分野は「物性(スピントロニクス)」です。

眞砂准教授のプロフィールや研究情報等はこちらからご覧ください。

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【第3回 「磁気の検出:ホール素子」】

磁場の検出には磁気センサーが用いられます。この磁気センサーにはいろいろな種類があります。今回はその中で最も一般的に用いられているホール素子(図1)に焦点を当てます。

ホール素子の原理(ホール効果)は、1879年に当時大学院生であった、米国人のエドウィン・ホールによって発見されました。しかし、このホール素子が実用化され広く使われるようになるのは100年以上後になります。

第2回コラムでのモーターの話で、磁場中で導線に電流を流すと、導線に力が掛かり回転することを紹介しました。これは、導線中に流れている電子に力(ローレンツ力)が掛かるためです(図2)。

この導線を回転しないように固定すると、ローレンツ力が掛かった電子は電流の流れている方向に直角に偏ります。電子の数に偏りがあると電圧が発生します。この電圧は磁場の大きさに比例して変わるので、これが磁気センサーとなるわけです。

ホール素子は磁石と組み合わせて、携帯電話やパソコンの開閉、モーターの回転の検出など、至る所に応用されています。特に、環境意識の高まりにより国内外で導入が推奨されている高効率モーターには不可欠となっています。ホール素子がモーターの回転を検出し、電流制御の切り替えを行うことによって、高効率・省エネルギーを実現しているのです。

従来のホール素子は、比較的大きな磁場検出の際に用いられてきましたが、私たちの研究グループでは材料や膜構造を検討することにより、地磁気(地球により生じる磁場)以下の磁場も十分に測定可能なホール素子を作製できています。現在、生体磁場まで検出できるような超高感度を目指して研究を進めているところです。 

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図1 旭化成のホール素子
(野口研究所 柴崎氏提供)

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図2 ホール効果の概略図
(電子は電流と逆向きに流れる)

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