今、特に話題となっている「働き方」。今回のコラムでは、労働法を専門とする法学部の所浩代准教授が「長時間労働と労働法」というテーマで5回にわたってお伝えしています。その4回目です。
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(バックナンバー)
第1回:はじめに
第2回:日本人は、働きすぎ?
第3回:1日の労働時間の上限は?
最終回:労働者の「いのち」を守る義務

月80時間の残業は違法?
第3回のコラムでご紹介したように、使用者が、法に従って36協定(労使協定)を締結し、これを労働基準監督署に届け出た場合には、1日8時間という上限労働時間を超えて働かせても、労働基準法違反とはなりません(時間外労働に対して法定の割増賃金を支払う場合)。もっとも、この36協定によって延長できる時間にも「限度基準」が設けられており、基本的には、どんなに忙しい部署でも、残業は月に45時間以内に納まるように管理する必要があります。
しかしながら、この時間外労働の制限ルールには、「特別条項付36協定」という「例外」が用意されています。「特別条項」とは、予算・決算業務や納期のひっ迫など「臨時的」に発生する特別な事情がある場合には、上記の限度基準を超えて残業をさせることができるという条項で、この「特別条項」がある職場では、月45時間を超える残業を労働者に要求することができます。
たとえば、2カ月以上の間連続して月80時間程度の残業を続けることは、脳や心臓の病気の発症を招きかねないとされていますが、この「特別条項付36協定」のある職場では、そのような残業を命じることも「臨時的」であれば許されることになります。
ただ、労働基準法が本来設定している労働時間の上限は「週40時間」です。月80時間の残業(=週60時間労働を1カ月間続けること)が「特別条項」により労働基準法違反にはならないとしても、そのようなことが繰り返されれば、健康を損ねる労働者が現れても不思議ではありません。
労働基準監督署は、毎年、著しい長時間労働が疑われる職場を調査して法違反がある場合には監督指導を行っているのですが、第2回でみたように、今でも、月に80時間以上の残業を恒常的に行っている労働者(正社員)が約14%も存在します。法制度の抜本改革には、まだ少し時間がかかりそうですが、まずは、職場全員で、仕事の仕方を見直すことから始めたいですね。
所准教授の著作
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『会社でうつになったとき労働法ができること』(旬報社、2014年)
労働時間規制や過労死などに対する補償制度を、分かりやすく解説した本。コラムで紹介している法制度を、さらに詳しく知りたい方におすすめです。 -
『精神疾患と障害差別禁止法~雇用・労働分野における日米法比較研究』(旬報社、2015年)
障害差別禁止法を世界に先駆けて導入したアメリカについて研究した本。日本の障害者法制についても解説しています。じっくり法学の議論を味わいたい方におすすめします。
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