〔研究者コラム〕「日本人は、働きすぎ? 長時間労働と労働法(第1回)」―はじめに―

今、特に話題となっている「働き方」。今回のコラムでは、労働法を専門とする法学部の所浩代准教授が「長時間労働と労働法」というテーマで5回にわたってお伝えします。

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日本の労働者は、働きすぎだと言われています。日本政府も、2016年夏に閣議決定された「基本方針」の中で、「働き方改革」を目玉に掲げ、長時間労働の是正に取り組むとしています。

たしかに、テレビや新聞では、毎日のように長時間労働と過労死の問題が取り上げられていますし、長時間労働は、女性の社会進出を阻む原因の一つとも考えられています(長時間の労働に従事することが難しい女性は、人事において低く査定される傾向があり、結果的に管理職にも登用されにくい等の問題が指摘されています)。

とはいえ、「日本の労働者って、週にどれくらい残業しているの?」と聞かれると、「う~ん。本当のところはどのくらいなんだろう」と、答えに詰まる方も多いのではないでしょうか。また、「長時間労働の是正に取り組む!」と言われても、そもそも、どのくらいの長さの労働が「適当」なのかについては、人によって違ってきますし、担当している仕事の内容によっても異なります。そのため、「長時間労働の是正」というキャッチフレーズは、これまでも複数回にわたって政府の重点目標に掲げられてきましたが、今なお、日本の職場の状況は大きく変わってはいません。

そこで、本コラムでは、「長時間労働と労働法」というテーマで、長時間労働が労働法によってどのように制限されているかについてお話したいと思います(全5回)。次回は、先ほど挙げた「日本の労働者って、週にどれくらい残業しているの?」というド直球な質問に答えたあと、他の国の労働者と日本の労働者の状況を比べて、日本の労働者は働きすぎなのかどうかを確かめてみたいと思います。お楽しみに。

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所准教授の著作

  • 『会社でうつになったとき労働法ができること』(旬報社、2014年)
    労働時間規制や過労死などに対する補償制度を、分かりやすく解説した本。コラムで紹介している法制度を、さらに詳しく知りたい方におすすめです。
  • 『精神疾患と障害差別禁止法~雇用・労働分野における日米法比較研究』(旬報社、2015年)
    障害差別禁止法を世界に先駆けて導入したアメリカについて研究した本。日本の障害者法制についても解説しています。じっくり法学の議論を味わいたい方におすすめします。

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