〔研究者コラム〕­-「花粉症(第3回)」 どのような人が発病しやすいのか-

全6回シリーズで、「花粉症」に関するコラムを紹介しています。紹介するのは、福岡大学筑紫病院耳鼻いんこう科の坂田俊文准教授です。研究分野は「耳鼻咽喉科学」で、福岡大学筑紫病院耳鼻いんこう科の診療部長を務めています。

坂田准教授のプロフィールや研究情報等については、こちらからご覧ください。

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【第3回 「どのような人が発病しやすいのか」】

花粉症を発病しやすい人にはどのような特徴があるのでしょうか。

花粉に特異的なIgEの増加が花粉症の発病に関係することは第2回のコラムで説明しました。つまり、このIgEの産生能力の違いが発病のしやすさに結びつくと言えます。IgEの産生能力は遺伝的に決められており、産生過程にブレーキをかける遺伝子(免疫抑制遺伝子)を持たない人ではたくさんのIgEが産生され、その結果アレルギー体質になると言われています。従って、ご家族に花粉症の人がいる場合には、遺伝的に発病のしやすさを受け継いでいる可能性があります。ただし、スギやヒノキに対するIgEが多い人でも実際に発病するのは半数未満なので、IgEの量だけが発病の原因ではありません。

また、花粉症と同種のアレルギー疾患に、気管支喘息とアトピー性皮膚炎があり、これらと花粉症は重複して発病することがあります。従って、これらの疾患を既に持っている人は、花粉症を起こす可能性が高くなります。

この他、生活環境もIgE産生に関係すると考えられています。スギやヒノキなどの花粉が多い地域で長く生活をするほど、IgEが増えて感作される可能性が高くなります。つまり、同じ体質の子供と大人が同じ地域に住んでいる場合、花粉に接する期間が短い子供より、長く接した大人の方が発病しやすいと考えられます。

一方、最近では子供での発病率増加が話題になっています。しかし、その理由については明らかになっていません。また、ディーゼル車排出微粒子や黄砂などの大気汚染物質は、既にスギ花粉症にかかっている人のIgEを増加させ、症状を悪化させると考えられています。しかし、健康な人にスギ花粉症を発病させる作用があるのかは不明です。

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  • 〔研究者コラム〕-「花粉症(第1回)」 花粉症とは-はこちら
  • 〔研究者コラム〕-「花粉症(第2回)」 発病までのしくみ-はこちら